「ママ、今年の結婚記念日だけどさ。俺、奮発して『メモリアルダイヤモンド』ってやつを作ろうと思うんだ。ほら、前にお前が調べてた、あの窓口でさ!」夕食後、夫がドヤ顔でとんでもない提案をしてきた。「は?あなた、私を早くお骨にしてダイヤ(素材)に加工する気?」
私、まだ生きてますけど
私、まだ生きてますけど
私、まだ生きてますけど
私の目が一瞬で据わる。
「違う違う違う!誤解だ!」
夫が両手を激しく振って否定する。
「ダイヤモンドの窓口ってさ、遺骨だけじゃなくて、生前の髪の毛とかからでも作れるんだって! 結婚記念にダイヤモンドを作りたいって問い合わせる人が今すごく多いらしいぞ。ほら、ふたりの永遠の愛を象徴するダイヤだよ!」
「へー、おとうさんにしてはロマンチックなこと言うじゃん」
お菓子の袋を開けながら、娘がニヤニヤと参戦してきた。
確かに、女性にとって婚約指輪や記念日のダイヤは生涯の宝物。だけど、無色透明なダイヤモンドの本当の価値って、実は大人女子にならないとわからないものなのかもしれない。
赤毛のアンが「ダイヤなんて大嫌い」と言った理由
「ダイヤモンドといえばさ、名作『赤毛のアン』のアン・シャーリーって、最初はダイヤが大嫌いだったのを知ってる?」
私が語り始めると、夫と娘が「え、そうなの?」と耳を傾けた。
アンは子供の頃、本で読んだダイヤモンドを「きっと美しく、ぼうっと光る紫色の石(アメシスト)」だと思い込んでいたの。でもある日、本物のダイヤを見て「ただの透明な石じゃない!」ってがっかりして泣いちゃったのよね。
若くて純粋な女の子の目には、無色透明なダイヤより、発色のきれいな紫水晶のほうが魅力的に映るもの。
だけど、大人になるにつれて私たちは知るのよ。
つい嘘をついてしまって、そのことに苦しんだとき。
知らずに人を傷つけ、自分の心にいつまでも棘が残っているとき。
純粋であり続けることがいかに難しいかを理解したとき、初めて人は「混じり気のない、透明で無垢なもの」の尊さに気づく。透明なものを大切に思えるのは、大人の証拠なのよね。
ちなみに、その後のアンは、結婚15年目に夫のギルバートからダイヤのネックレスをプレゼントされたときは、もうがっかりして泣きませんでした。なぜかって? それは「大人の女性」になり、夫の深い愛情のきらめきがその透明な石に重なって見えたから。
「深すぎる。お母さん、急に文学系ユーチューバーみたいなこと言うじゃん」と娘。
左手の薬指は、心臓と「愛の血管」で繋がっている
「でもさ、なんでそもそも結婚や婚約にはダイヤモンドの指輪なわけ?」
夫が不思議そうに首をかしげる。
婚約指輪にダイヤが選ばれるのは、その「永遠の輝き」がふたりの永遠の愛に通じるから。それに、昔から宝石には「護符」や「魔除け」の役割があると信じられていて、愛する人を災いから守るという意味もあるの。
そして、婚約指輪も結婚指輪も「左手の薬指」に着けるのには、ロマンチックな理由があるのよ。
【左手薬指の由来】
古代エジプトでは、「左手の薬指には、心臓(心)へと直接つながる『愛の血管』が通っている」と信じられていました。その神聖な習慣が、今も世界中で受け継がれているのです。
結婚式当日の、指輪の正しい移動ステップ
挙式前:婚約指輪をあらかじめ「右手」に移しておく。
指輪交換:結婚式の中で、結婚指輪を「左手の薬指」にはめる。
挙式後:右手にあった婚約指輪を、左手の結婚指輪の「上」に重ねてはめる。
これで「ふたりの永遠の愛の誓いにロックをかける」という意味になるのよね。
指輪の裏の「刻印」の秘密
指輪の内側をひっくり返してみて。実は素敵な違いがあるの。
婚約指輪の刻印:婚約の日+「AtoB」(夫から妻へ)
結婚指輪の刻印:結婚の日+夫のリングには「BtoA」、妻のリングには「A toB」
お互いに贈り合うものだから、イニシャルが逆になるのが一般的なのよ。
「へぇー!知らなかった! おとうさん、自分たちの指輪の裏、何て書いてあるか覚えてる?」
娘の質問に、夫は急に泳いだ目で自分の左手を見つめ、慌てて話題を変えた。
「そ、そういえば最近は、環境に優しい合成ダイヤモンドってやつもトレンドなんだろ!?」
焦る夫の言う通り、最近はSDGsやカーボンニュートラル(大気中の二酸化炭素から炭素を取り出して作る)の観点から、ラボで育つ合成ダイヤを選ぶカップルも増えている。「シンカ」「エネイ」「プライマル」「キマイ」といった次世代ブランドが日本でも人気ね。
覚えられる!?細かすぎる結婚記念日の世界
「でね、ママ。結婚記念日といえば『スイートテン(10周年)』が有名だけど、実は12周年から毎年、〇〇婚式って名前がついてるのを見つけたんだよ。俺、全部調べてメモしてきた!」
夫が自慢げにノートを開いた。
「どれどれって、いや、細かすぎない!?」
覗き込んだ娘が素でツッコむ。
12周年:めのう婚(アゲート)
13周年:月長石婚(ムーンストーン)
14周年:苔めのう婚(モス・アゲート)
15周年:水晶婚(ロック・クリスタル)
16周年:黄玉婚(トパーズ)
17周年:紫水晶婚(アメシスト)
18周年:ざくろ婚(ガーネット)
19周年:風信子婚(ジルコン)
23周年:青玉婚(ブルー・サファイア)
26周年:星条青玉婚(ブルー・スター・サファイア)
30周年:真珠婚(パール)
35周年:珊瑚婚(コーラル)
39周年:猫目石婚(キャッツ・アイ)
40周年:紅玉婚(ルビー)
45周年:金緑婚(アレキサンドライト)
52周年:星条紅玉婚(スター・ルビー)
55周年:翡玉婚(エメラルド)
60周年:黄金金剛婚(イエロー・ダイヤモンド)
65周年:星条青玉婚(グレー・スター・サファイア)
67周年:星条青玉婚(パープル・スター・サファイア)
75周年:金剛石婚(ダイヤモンド)
「14周年の、苔めのうって何!? 苔(コケ)ってちょっと地味じゃない!?」と娘が大爆笑。
お馴染みの25周年(銀婚式)や50周年(金婚式)のほかにも、こんなにたくさんの名前があるのね。
そして、最初の婚約指輪でダイヤを選び、結婚後、気が遠くなるような歳月を経た「75年目」に再びたどり着くのがダイヤモンド婚式。ダイヤモンドは、人生の最初から最後まで、ずっと夫婦の幸せを見守ってくれる宝石なのだ。
「毎日、出産・育児・家事って大変な日々を乗り越えていく妻にさ、途切れることなくダイヤが敷き詰められた『エタニティリング(永遠のリング)』を贈るのもステキな習慣なんだって。だからさ、俺たちも記念日に」
夫が熱っぽく語る。
最後に:夫の本心
「おとうさん、色々調べてくれてありがとう。私がまだ生きてるうちに、ふたりの記念としてダイヤを作ろうって言ってくれた本心、よーく分かったわ」
私が微笑むと、夫は「だろ?永遠の愛の象徴だからな!」と満足げに胸を張った。
「で、おとうさん。さっきの指輪の刻印の話だけど」
私は自分の左手をすっと差し出す。
「私たちの結婚指輪の裏の刻印、ちゃんと覚えてるわよね?」
「えっ?あ、いや、えっと『AtoB』じゃなくて『パパtoママ』?」
冷や汗を流しながら、必死に自分の指輪を外そうとする夫。
「よし、今すぐ外して確認しなさい。もし間違ってたら、今年の結婚記念日のダイヤは、あの細かすぎる一覧の『14周年:苔めのう(コケ)』にするからね!」
「ええーっ!ダイヤから格下げ!?」
永遠の愛を誓ったはずの我が家の力関係は、どうやらダイヤモンドよりも硬く、揺るぎないもののようです。
結婚記念日の過ごし方に迷ったら、ふたりの軌跡を形にする「メモリアルダイヤモンド」を専門の窓口で相談してみるのも、新しい選択肢としてとってもおすすめですよ!(指輪の刻印の抜き打ちテストには、くれぐれもご注意を!)



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