仙台駅北口から徒歩8分。
商店街の端に、ひっそりと木の香りを漂わせる店がある。
名前は サンタ第2工房。
看板は少しゆがんでいるが、
そのゆがみさえも「手作りの温度」を感じさせた。
タダシは、その店の前で深呼吸した。
胸の奥がざわつくのは、緊張ではなく
なぜか予感に近かった。
タダシは 就労継続支援B型事業所トテチテタの職員で、
今日の仕事は「チラシ配り」だった。
だが、工房の扉を開けたのは、
チラシを配るためではない。
工房の奥で、ひとりの女性が木片を磨いていた。
光の粒が舞うように、木の粉がふわりと浮かぶ。
その女性、ミクは、
タダシが思っていたよりずっと小柄で、
そして、ずっと さみしそうだった。
忙しさに追われているというより、
忙しさにしがみついているように見えた。
タダシは、胸の奥が少し痛くなるのを感じた。
「こんにちは」
タダシが声をかけると、
ミクは木片を磨く手を止めずに、
静かに返事をした。
「こんにちは」
その声は、
木の粉よりも静かで、
どこか遠くの方を見ているようだった。
タダシは、なぜか胸が熱くなった。
その日、タダシは気づいた。
ミクは、孤独を抱えた芸術家で、
タダシは、不器用で恥の多い人生を歩んできた男で、
二人はまったく違う世界に生きているのに、
なぜか、同じ温度を持っていた。
サンタ第2工房の扉が開いた日。
それは、タダシの人生が静かに変わり始めた日だった。


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