第36話 タダシが自分の気持ちをそっと返した日

迷ってもいい
サンタ第2工房関係者の抱負…
木工作家さん
小物作家
次は、かわいい
ブランコを作って
みますね。
木工職人さん
木工職人
問題は、四角い積み木を
どうやって
かわいくするか、だ。

仙台の光のトンネルで心が揺れたその後。
タダシは、胸の奥にまだ残る温度を抱えながら、
いつものようにサンタ第2工房へ向かっていた。

工房の扉を開けると、
木の香りがふわりと広がり、
ミクは作業台の前で木片を並べていた。

その姿は、
昨日とはまったく違う日常の姿なのに、
どこか少しだけ柔らかく見えた。

夜がどれほど特別でも工房の朝は変わらない

ミクは、タダシに気づくと
いつものように静かに微笑んだ。

「こんにちは、タダシさん」

その声は、
光のトンネルで見せた愛しい表情とは違う、
職人としての落ち着いた声だった。

でも——
タダシには分かった。

その声の奥に、
あの光の余韻がほんの少しだけ残っていることを。

(ミクさん
 あの夜が特別でも、
 ここでの毎日は変わらず続いていくんだ)

その事実が、
タダシの胸に静かに沁みた。

工房の毎日は淡々としてどこか温かい

ミクは木片を手に取り、
角を丸くしながら言った。

「あの夜のイルミネーションは
 すごくきれいでしたね」

タダシはうなずいた。

「はい。
 ミクさんと歩けてよかったです」

ミクは、
少しだけ照れたように笑った。

でもすぐに、
いつもの職人の表情に戻った。

木を磨く音。
紙やすりのこすれる音。
工房の静かな空気。

定禅寺通りの光とは違う、
日常の光がそこにはあった。

特別な夜のあとでもミクはそのままだった

ミクは、ふとタダシのほうを見た。

「タダシさん
 あの日のこと、思い出してますか?」

タダシは少しだけ目を伏せた。

「はい。
 思い出してます」

ミクは、
胸の前で手をぎゅっと握りしめた。

「私もです。
 でも、今日もちゃんと仕事しますね」

その言葉は、
ミクらしい強さだった。

ミクさんが見せた弱さも、
光の中で見せた柔らかさも、
全部抱えたまま——

それでも、
ミクは今日も工房で木を磨いていた。

(ミクさん
 あなたは、どんな気持ちを抱えていても
 毎日を丁寧に生きる人なんだ)

タダシは胸が熱くなった。

タダシの願いは揺れ続けても工房の毎日は続く

タダシは心の中でそっとつぶやいた。

(守ってあげたいほど大切な人が、
 今日もここで木を磨いている)

夜の散歩で生まれた願いは、
まだ言葉にならないまま胸の奥に残っている。

でも——
その願いがどれほど強くても、
タダシには群馬の家族がいて、
ミクには仙台での生活がある。

二人の世界は交わらない。
それでも工房の毎日は続いていく。

ミクは、
タダシの胸の揺れを知らないまま、
静かに微笑んだ。

「タダシさん
 今日も一緒に作業しましょうね」その言葉は、
あのときの光の洪水よりもあたたかく、
タダシの胸に深く沈んだ。

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