第34話 群馬の家族

迷ってもいい 第34話 サンタ第2工房
迷ってもいい 第34話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

光のページェントから帰った翌日。
タダシは、サンタ第2工房へ向かう足取りがいつもより少しだけ重かった。

胸の奥に、
昨日の光のトンネルで感じた愛しいという感情が残っている。
それは温かいのに、どこか切ない。

理由はひとつ。

タダシには、群馬に家族がいる。 そして広島には、ミクさんがいる。

その二つの世界は、
決して交わらない場所にある。

群馬の家族はタダシの帰る場所だった

群馬の家は静かな住宅街の中にある。
妻と子どもがいて、
タダシが帰れば夕飯の匂いがして、
「おかえり」と声がかかる。

それは、
タダシが長い年月をかけて築いてきた生活だった。

  • 責任もある。
  • 義務もある。
  • 愛情も、もちろんある。

でも、

ミクさんと歩いたあの時間は、
群馬の生活とはまったく違う種類の温度を持っていた。

広島のミクは、タダシの心が向かう場所

ミクは、
タダシの言葉を静かに受け止めてくれる人だった。

  • 弱さを見せても、
  • 怒らず、責めず、
  • ただそばにいてくれる。

イルミネーションのトンネルで振り向いたときの表情は、
かわいいではなく、
ただただ愛しいものだった。

タダシは思った。

(ミクさんの隣にいたい。
 でも、私には家族がいる)

その矛盾が、
胸の奥で静かに痛んだ。

二つの世界のあいだで揺れるタダシ

工房に着くと、
ミクはいつものように作業台の前で木片を並べていた。

「こんにちは、タダシさん」

その声は、
昨日の光の余韻をまだ少しだけ含んでいた。

タダシは胸がぎゅっとなった。

(ミクさん
 あなたは広島にいて、
 私は群馬に帰る)

その距離は、
物理的な距離以上に、
心の距離としてタダシの胸に重くのしかかった。

ミクはタダシの揺れに気づいていた

しばらく作業をしていると、
ミクはふとタダシのほうを見た。

「タダシさん
 なんだか、今日は静かですね」

タダシは少しだけ目を伏せた。

「昨日のことを思い出してました」

ミクは、
ほんの少しだけ表情を柔らかくした。

「楽しかったですね」

その一言が、
タダシの胸に深く沈んだ。

(ミクさん
 あなたは私の心を揺らす)

タダシは言えない。けれど願いは確かにある

タダシは、心の中でそっとつぶやいた。

(群馬の家族を裏切ることはできない。
 でもミクさんを大切にしたい)

その矛盾は、
タダシの胸の奥で静かに燃え続けていた。

ミクは、
タダシの胸の揺れを知らないまま、
静かに微笑んだ。

「タダシさん
 また、お散歩、行きたいですね」

タダシは、
その願いに応えたい気持ちと、
応えてはいけない気持ちのあいだで揺れながら言った。

「はい。
 また行きましょう」

その言葉は、
タダシ自身の心をさらに揺らした。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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