定禅寺通りのイルミネーションのトンネルを抜けたあと、
二人は仙台の冬の街をゆっくり歩いていた。
光の余韻がまだ肩に残っているような、
そんな静かな時間だった。
タダシは、ミクの横顔を見ながら歩いていた。
光に照らされた頬は少し赤く、
寒さと、ほんの少しの照れが混ざった色をしていた。
そのときだった。
ミクが、ふと――
振り向いた。
その振り向き方はいつもと違った
ミクは、タダシのほうを見て、
ほんの一瞬だけ目を合わせた。
その目は、
いつもの職人としての静かな目ではなく、
どこか迷いと、
どこか確かめるような光を含んでいた。
「タダシさん」
名前を呼ぶ声が、
冬の空気よりも柔らかかった。
タダシは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
(ミクさん
今、何を考えてるんだろう)
ミクは言葉を探していた
ミクは、少しだけ歩く速度を落とした。
「タダシさん
今日、来てよかったです」
タダシは微笑んだ。
「私もです。
ミクさんと歩けてよかった」
ミクは、ふっと笑った。
でもその笑いは、どこか不安を含んでいた。
「タダシさんって、
どうしてこんなに優しいんですか?」
タダシは驚いた。
「えっ?優しいですか?」
ミクは、少しだけ目を伏せた。
「はい。
私が弱いところを見せても、
嫌な顔ひとつしないから
なんか、安心しちゃうんです」
その声は、
光の粒よりも細かく震えていた。
振り向いた理由は確認だった
タダシは、ゆっくりと言った。
「ミクさん。
私はミクさんが弱さを見せてくれるの、嬉しいですよ」
ミクは、驚いたように顔を上げた。
「嬉しい?」
タダシはうなずいた。
「はい。
ミクさんが信じてくれてる証拠だから」
ミクは、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
「タダシさん。
私、今日
ふと振り向いたとき
タダシさんがいるか確認したんです」
タダシは息をのんだ。
「確認?」
ミクは、光の余韻の中で静かに言った。
「はい。
私の隣に、ちゃんとタダシさんがいるか
それを確認したくて」
その言葉は、
イルミネーションよりもあたたかく、
タダシの胸に深く沈んだ。
二人の距離は、確かに変わっていた
ミクは、少し照れながら続けた。
「タダシさん
これからも、隣にいてくれますか?」
タダシは、迷いなく答えた。
「もちろんです。
ミクさんが振り向いたら、
いつでも私がいます」
ミクは、光の中で小さく微笑んだ。
「ありがとう。
タダシさんに言えてよかった」
その笑顔は、
定禅寺通りの光よりもやさしく、
タダシの胸に深く沈んだ。


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