第7話 積み木が入らない事件

迷ってもいい
サンタ第2工房関係者の抱負…
木工作家さん
小物作家
次は、かわいい
ブランコを作って
みますね。
木工職人さん
木工職人
問題は、四角い積み木を
どうやって
かわいくするか、だ。

サンタ第2工房の昼下がりは、
木の香りと静かな光が混ざり合う、やさしい時間だった。

タダシは、昨日ミクさんからもらった
かわいい哲学の余韻を胸に、
今日も工房へ向かっていた。

しかし
この日は、タダシの不器用コメディが大きく動く日だった。

運命の瞬間:積み木が入らない

「ミクさん、できました。
 積み木の箱入ると思います」

タダシは、少し誇らしげに箱を差し出した。
昨日までの自分より、少しだけ自信があった。

ミクは、木片を磨く手を止め、
箱をそっと受け取った。

「ありがとう。
 じゃあ、入れてみるね」

その声は、いつも通り静かだった。

しかし
次の瞬間、工房の空気が変わった。

ミクが積み木を箱に入れようとしたが、
入らない。

どこからどう見ても、
らない。

タダシは、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

「あれ?」

ミクは、もう一度試した。
角度を変えても、押しても、回しても
入らない。

タダシは、心の中で叫んだ。

(やばい!)

ミクの優しい怒り

ミクは、積み木を見つめたまま、
小さく息を吐いた。

「タダシさん」

タダシは、覚悟した。

「す、すみません」

ミクは、ふっと笑った。

「いいですよ、いいですよ。
 なんとかしますから」

その声は、
優しいのに、
どこか震えていた。

タダシは思った。

これは優しい怒りだ。

怒鳴らない。
責めない。
でも、確実に怒っている。

ミクは、積み木をひとつ手に取り、
指先で角をなぞった。

「この子たち、ちょっと太っちゃったね」

その言葉は、
怒りではなく、
木へのやさしい叱責だった。

タダシは、穴があったら入りたい気持ちになった。

ミクの職人魂が動く

ミクは、積み木を作業台に並べた。
そして、ひとつずつ削り始めた。

「かわいくなるまで、削るから」

その声は、
怒りではなく、
職人としての覚悟だった。

タダシは見ていた。

ミクの指先が、
木片をそっと削るたびに、
木の粉が光を受けて舞う。

その姿は、
まるで木の精霊を救っているようだった。

タダシは思った。

この人は、怒りよりもかわいさを優先する。

それが、ミクの生き方だった。

タダシの胸に落ちたもの

削り終えた積み木は、
箱にぴったり入った。

ミクは、ふっと笑った。

「ほら、かわいくなった」

タダシは、胸が熱くなった。

自分の失敗を責めるのではなく、
木をかわいくすることを優先する。

その姿が、
タダシにはまぶしく見えた。

ミクは言った。

「タダシさん、
 また作ってみてね。
 失敗してもいいから」

その言葉は、
タダシの胸の奥に静かに落ちた。

失敗してもいい。

その言葉を、
タダシは人生でほとんど言われたことがなかった。

その日、工房を出るとき、
胸の奥が少しだけ軽くなっていた。

積み木が入らない事件は、
二人の距離をまた少し近づけた日だった。

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