第4話 リョウマくんと工房の午後

迷ってもいい
サンタ第2工房関係者の抱負…
木工作家さん
小物作家
次は、かわいい
ブランコを作って
みますね。
木工職人さん
木工職人
問題は、四角い積み木を
どうやって
かわいくするか、だ。

サンタ第2工房の午後は、
いつもより少しだけ甘い木の香りが漂っていた。
タダシが扉を開けると、
その理由がすぐに分かった。

ミクの隣に、見慣れない青年がいた。

金髪に近い明るい茶色の髪。
瞳は黒くて、子どものように好奇心でいっぱい。
そして笑顔がやたらとまぶしい。

「こんにちは!」

青年は、タダシを見るなり、
日本語とは思えないテンションで挨拶した。

ミクが、少し照れたように紹介した。

「この子、リョウマくん。
 アルゼンチンから来た19歳の研修生です」

タダシは思わず言った。

「アルゼンチン!?
 なんでまた仙台に?」

ミクは、肩をすくめて笑った。

「木のおもちゃが好きなんだって。
 日本語はほとんど通じないけど、
 かわいいは通じるみたいで」

リョウマくんは、積み木を手に取り、
目を輝かせて叫んだ。

「Cute!!」

その瞬間、ミクの表情がふっとほどけた。

かわいいは世界共通語

リョウマくんは、積み木を並べながら、
スペイン語をまくしたてていた。

「Esto es muy lindo! Mira, mira!」

タダシはまったく意味が分からなかったが、
ミクは笑っていた。

「かわいいって言ってるんですよ。
 この子、かわいいものが好きで」

ミクの声は、
昨日よりもずっと柔らかかった。

タダシは思った。

(ミクさんは、かわいいという言葉で世界とつながっているんだ)

ミクの表情が変わる瞬間

リョウマくんは、積み木を高く積み上げて、
最後のひとつをそっと乗せた。

「Perfecto!」

その瞬間、ミクは思わず拍手した。

「すごいね、この子
 センスあるかもしれない」

タダシは驚いた。

昨日まで、
ミクは自分の世界に閉じこもっていた。
木と話すほうが楽だと言っていた。

でも今は
リョウマくんの無邪気さが、
ミクの孤独を少しだけ溶かしていた。

タダシが見たさみしさの影

しばらくして、
リョウマくんが外に出ていった。

工房に静けさが戻ると、
ミクはふっと息を吐いた。

「あの子、かわいいね」

その声は、
さっきまでの明るさとは違い、
どこか影を含んでいた。

タダシは気づいた。

(ミクは、誰かがいると安心するけど、
 誰かがいなくなると、急にさみしくなるんだ)

ミクは続けた。

「人といるの、ほんとは苦手なんですけど
 あの子みたいに、まっすぐな子は楽ですね」

その言葉は、
タダシの胸に静かに落ちた。

二人の距離がまた少し縮まった午後

ミクは、積み木をひとつ手に取り、
光にかざしながら言った。

「タダシさん
 また来てくださいね。
 リョウマくんも、いつでも」

その声は、
昨日よりもずっとあたたかかった。

タダシは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

「はい。
 また来ます」

その日、工房の午後は、
木の粉と笑顔が混ざり合う、
やさしい時間だった。

ミクの孤独に、
タダシとリョウマくんの存在が
ほんの少しだけ染み込んだ日だった。

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