夕飯のあと。
食卓に残った味噌汁の湯気がゆらゆら揺れる中、私はそっと切り出した。
「ねぇ。お母さんのお骨、ダイヤモンドにしたいんだよね」
その瞬間、夫の動きがピタッと止まった。
箸を置き、眉間にしわを寄せる。
あ、来た。慎重すぎる家計防衛スイッチが発動した。
🔥家族会議、勃発
「おいおい、それってアレだろ?
新手の怪しい、スピリチュアル詐欺じゃないのか?
法外な値段を請求されて、フタを開けたらただのガラス玉でした〜ってオチじゃないの?」
はい、出ました。
夫の疑心暗鬼モードが火を噴く瞬間。
私は深呼吸して心の中で唱えた。
(落ち着け私。ここで感情論をぶつけたら負け。
データとロジックで黙らせるのよ!)
🔬激論①「それ、本当に本物のダイヤなの?」
「まずね、遺骨ダイヤモンドは100%、正真正銘の本物のダイヤモンドなんだよ」
「いや、人工だろ?人工パパならぬ、人工ダイヤだろ?」
夫のツッコミが早い。
「人工(合成)だけど、成分も硬さも輝きも天然と完全に同じ。
鑑定士が最新の機械で調べても、天然と区別できないレベルなんだよ」
夫の眉がピクッと上がる。
よし、興味が湧いてきた。
「お骨に残ってる炭素を取り出して、巨大なマシーンで高温高圧にするの。
天然ダイヤが何億年もかけて地中で生まれる環境を、ラボで再現して育てるんだよ」
「へぇ。オカルトじゃなくてガチの科学なのか」
理系スイッチ、良い方向に入りました。
🦴激論②「骨ってカルシウムじゃないの?」
「そもそもさ、遺骨ってカルシウムの塊だろ?
炭素なんて入ってるの?」
鋭い。だが想定内。
「主成分はカルシウム。でもね、火葬後のお骨には約1%だけ炭素が残ってるの。
その超貴重な1%を、職人さんが丁寧に抽出するんだよ」
「1%?そんなに少ないのか」
「だからこそ、ラボの人たちも世界に一つの宝物として厳重に扱ってくれるんだって」
宝物という言葉に弱い夫は、胸ポケットを押さえた。
チョロい。
💇激論③「お骨が足りなかったら?」
「じゃあさ、もし炭素が足りなかったらどうするんだよ。ゲームオーバー?」
「ノンノン。思い出の品から炭素が取れるよ。
メガネ、日記、服、写真。
最悪は家族の髪の毛を混ぜて作ることもできるの」
「髪の毛!!」
夫が椅子ごと後ろに下がる。なぜ下がる。
「ホラーじゃないから!
お母さんと私の髪の毛を混ぜて作る究極の愛だよ」
「愛か。それなら綺麗だな」
夫、元の位置に戻る。
ほんと単純で助かる。
💸激論④【本丸】「で、いくらするんだ?」
来ました。
本日のラスボス、夫のお財布セキュリティ大臣。
「一番リーズナブルなのは26万4千円。
小さなダイヤを2つ作るミニダイヤペアね」
「ほう、思ったより現実的だな」
「人気の0.10ctをリングにすると45万円くらい。
最大サイズで色をブルーにすると340万円くらいになることもあるけど」
「さ、さんびゃくよんじゅう万!?」
夫の目が泳ぐ。
お茶を吹きかけそうなので、私は畳みかけた。
「でもサイズと枠で全然変わるから!
まずは見積もり取ればいいの。車のオプション選びと同じ!」
「車かなるほど、それなら納得だわ」
車という例えで夫の金銭ブレーキが解除された。
チョロい(2回目)。
⏳激論⑤「完成まで何ヶ月?」
「海外ラボに送るんだろ?どれくらいかかるんだ?」
「3〜6ヶ月。長いと半年〜1年」
「そんなに!?」
私は少し優しい声で言った。
「でもね、その待つ時間が心を癒してくれるんだよ。
お母さんが遠い国で頑張ってるんだなって思うと、寂しさが少し和らぐの」
夫は静かにうなずいた。
🎁完全論破!夫、ついに陥落
「完成したダイヤは専用の箱に入って届くし、鑑定書もつく。
誰の炭素から作られたかも証明されるよ」
「へぇ。思った以上にちゃんとしてるんだな」
「でしょ?
怪しい詐欺じゃなくて、科学と愛の結晶なんだよ」
夫はホッとした顔で笑った。
「よしわかった。まずはパンフレット取り寄せて、第2ラウンドの家族会議だ!」
こうして、
慎重すぎる夫の説得は、見事に成功したのでした。
お母さんが最高の輝きになるための第一歩を、私たちは静かに踏み出した。



コメント