遺骨ダイヤモンド14 戸田火葬場へ行こうとして大騒ぎ

遺骨ダイヤモンド14 遺骨ダイヤモンド
遺骨ダイヤモンド14
はじめに(遺骨ダイヤモンド)

ハートインダイヤモンドでスタッフをしていたことがあります。その時の経験をもとに、わかりやすく物語にしてみました。

登場人物紹介

ミクの夫です。遺骨ダイヤモンドって、うさんくさいので苦手です。

ミクです。お母さんの遺骨をブルーダイヤモンドにしたことがあります。

戸田市のマンションの朝は、だいたい騒がしい。
しかし、この日の騒がしさは、いつもの「靴下が片方ない」レベルではなかった。

「なあ、ミク。本当に行くのか、あそこに?」

夫は、テレビのリモコンを握りしめたまま、
まるで宇宙に旅立つ息子を見送るかのような顔をしていた。

🐾ミケのためだもの

「行くよ。ミケのためだもの」

ミクは愛猫ミケの写真を胸に抱きしめながら、きっぱりと言った。

「だってさ、移動火葬車とか、煙がモクモクして近所の人に見られたら」

「あなた、それ昭和のイメージよ。
今どきの移動火葬車は静かで綺麗なの。
ていうか今回は戸田火葬場に行くって言ってるでしょ」

「戸田火葬場って、あれ板橋区にあるのに戸田って名前の?」

「そう。大正時代に戸田村にあった名残なの。歴史あるのよ。東京都内で二番目に古いんだから」

「へぇ。そんな豆知識いらんけど」

夫は、なぜか急に歴史の重みを感じたのか、背筋を伸ばした。

👧👧娘たち乱入

そこへ、小学生のサオリと、中学生になったばかりのユキが乱入してきた。

「ママ〜!ミケのお別れ室って鳥の絵が描いてあるんでしょ?友達が言ってた!」

「そうなのよ。空に羽ばたく鳥の絵。ミケもきっと喜ぶわ」

「えっ、ミケって鳥好きだったっけ?」

「そこは雰囲気よ、雰囲気」

夫はスマホで料金表を見ながら眉間にしわを寄せた。

「小型動物の立会火葬で33,000円。特大動物で60,500円。粉骨11,000円。
うーん、ミケは小型でいいんだよな?」

「夫、ミケを特大扱いしようとしてない?」

「いや、ほら、最近ちょっと太ってたし」

「失礼な。ミケはふくよかなの!」

サオリが笑いながら言った。

「パパ、ミケは特大じゃなくてぽっちゃり小型だよ」

ミケの遺影がどこか誇らしげに微笑んでいるように見えた。

🚗戸田火葬場へ

「よし、覚悟を決めたぞ!」

朝のリビングに、夫の妙に張り詰めた声が響いた。

ミクとサオリが振り向くと、そこには──
白いヘルメット、軍手、そしてなぜか登山用リュックを背負った夫が立っていた。

「パパ、それ何の装備?」

ユキが冷静に尋ねる。

「いや、ほら、火葬場って熱いんだろ?炉とかあるし。安全第一だと思ってな」

「夫、火葬場は工事現場じゃないのよ」

「でも、ほら、熱風とか飛んでくるかもしれないし」

「飛んでこないわよ」

ミクが呆れたように言うと、夫はさらにリュックをゴソゴソし始めた。

「あと、非常食も持ってきた。カロリーメイトと水と……なぜか乾燥わかめ」

「なんで乾燥わかめ?」

「いや、なんとなく。非常時に良さそうだろ?」

「パパ、火葬場は遭難する場所じゃないよ」

とサオリ。

🐱ミケのサイズ問題

夫はスマホを見ながら突然叫んだ。

「ミク!ミケの火葬、特大動物の料金になったらどうするんだ!」

「だから、ミケは特大じゃないって言ってるでしょ」

「でも最近、抱っこするとズッシリしてたし」

「それはパパのお腹も同じでしょ」

「ぐっ!」

サオリが冷静に補足する。

「パパ、ミケはぽっちゃり小型。パパはぽっちゃり中型。分類が違うよ」

「なんだ、その動物園みたいな分類は!」

🚙出発

ようやく車に乗り込んだミク一家。

エンジンをかけた瞬間、ミクがふとつぶやいた。

「ねえ、ミケ、ダイヤモンドにできるらしいのよ」

「ダイヤモンドォォォ!?」

夫の叫びが車内に響き渡った。

「ちょ、ちょっと待て!ミケが宝石に?そんな高級な!」

「パパ、ミケはぽっちゃり小型だけど、ダイヤは高級小型だから」

「例えがよく分からん!」

夫は震えながらシートベルトを締めた。

「ミケがダイヤに……俺の給料より輝く存在に……」

「夫、それは前からよ」

「ぐはっ!」

📚娘たちの冷静な解説

後部座席のユキとサオリがタブレットを見ながら言った。

「パパ、メモリアルダイヤモンドって遺骨や遺灰の炭素から作るんだよ。
圧力と温度をかけて結晶化させるの」

「ユキ、なんでそんなに詳しいんだ」

「昨日、自由研究のテーマ探してたら出てきた」

「自由研究のレベル超えてる気がするんだけど」

💸夫の小遣い問題

信号待ちのとき、夫がふとつぶやいた。

「でもさ、ダイヤモンドって高いんだろ?」

「まあ、安くはないわね」

ミクが言うと、夫は急に焦り出した。

「えっ、ちょっと待って。俺の小遣い、どうなるの?」

「夫、誰もあなたの小遣いから出すなんて言ってないわよ」

「そ、そうかよかった……」

サオリが冷静に刺す。

「でも、パパ、ママが家計から出すって言ってないだけで、
パパの小遣いから出さないとも言ってないよ」

「えっ、えっ、ミク?」

「サオリ、変なこと言わないの」

「事実を述べただけだよ」

夫の顔が信号の赤より赤くなった。

🐾ミケとの最後の時間

「でもね、夫」

ミクが少し真面目な声で言った。

「ミケは、私たちの家族だったでしょ。
最後に何か形に残せるなら、それもいいかなって思ったの」

夫はしばらく黙っていたが、やがて小さくうなずいた。

「そうだな。ミケは、俺が帰ってくるといつも玄関まで来てくれたしな。
ダイヤになっても、そばにいてくれる気がするな」

ユキが優しく笑った。

「パパ、そういうところはちゃんとしてるよね」

「お、おう。褒められてるのか?」

「うん。珍しく」

「珍しくって言うなよ」

🔥火葬へ

戸田火葬場の駐車場に車を停めると、夫は深呼吸をした。

「よし、行こうか」

「うん」

「パパ、靴左右逆だよ」

「えっ!? あっ、本当だ!」

夫は慌てて靴を履き替え、
ミクと娘たちに軽く笑われながら、
四人はゆっくりとお別れ室へ向かって歩き出した。

ミケの遺影は、今日もどこか穏やかに微笑んでいる。

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