アパートを引き払ってから数日。
ミクさんの新しい生活は、
まるで春の風のように軽やかに、
そして予想以上のスピードで進んでいた。
サンタ第2工房の朝。
タダシが扉を開けると
「あれ?」
工房の空気が、また昨日と違っていた。
- 棚の配置がさらに変わっている。
- 商品が減っている。
- 床が広くなっている。
- そして、ミクさんの動きがやっぱり軽い。
まるで、
ミクさん自身が新生活の風になった
みたいだった。
ミクさん、突然の新しい役割分担を宣言する

「こんにちは、タダシさん」
ミクさんは、木片を抱えながら言った。
その声は、昨日よりもさらに軽やかだった。
タダシは思わず言った。
「ミクさん
また棚の配置が変わっていますね」
ミクさんは、木の鳥を棚の上に置きながら言った。
「はい。
新しい生活を始めたら
工房ももっと軽くしたくなって」
タダシは苦笑した。
「昨日も同じことを聞いた気がしますが
今日はさらに加速していますね」
ミクさんは、少し照れたように笑った。
「はい。
軽くなるって、気持ちいいんです」
その言い方は、
まるで新しい人生を楽しんでいる子どものようだった。
そして
突然、ミクさんは言った。
「タダシさん。
今日から、タダシさんには新しい役割をお願いします」
タダシは固まった。
「新しい役割、ですか?」
ミクさんは、真剣な顔でうなずいた。
「はい。
タダシさんには
工房の整理係になっていただきたいんです」
タダシは思わず聞き返した。
「整理係ですか?」
ミクさんは、木片を抱えながら言った。
「はい。
私、作るのは得意なんですけど
片づけるのは、どうも苦手で」
タダシは心の中で思った。
(いや、ミクさん
苦手どころじゃなくて、
倉庫をアパート一室まるごと作るレベルですよ)
しかし口には出さなかった。
ミクさんは続けた。
「タダシさんは、物の配置を見るのが上手です。
だから
工房の整理を、タダシさんにお願いしたいんです」
タダシは胸が熱くなった。
(ミクさん
あなたは本当に、私のことを信頼してくれているんだ)
タダシ、突然の整理係に巻き込まれる

その瞬間から、
タダシは完全に巻き込まれた。
「タダシさん、これをこっちへ」
「タダシさん、これどう思います?」
「タダシさん、この棚はここでいいですか?」
「タダシさん、これ捨ててもいいですか?」
タダシは汗をかきながら言った。
「ミクさん
今日の私は、ほぼ工房の店長代理ですね」
ミクさんは、くすっと笑った。
「はい。
タダシさんは今日、店長代理さんです」
その笑顔は、
工房の光よりもあたたかかった。
ミクさんの新しい生活は、心の中にも広がっていた

家具の移動が終わると、
工房は見違えるほど広くなっていた。
ミクさんは、棚の前に立ちながら言った。
「タダシさん
私、最近思うんです」
タダシは少し身を乗り出した。
「何をですか?」
ミクさんは、木の鳥をそっと撫でながら言った。
「身軽になると
心も軽くなるんですね」
タダシは息をのんだ。
ミクさんは続けた。
「アパートを引き払って
家の中を片づけて
工房も整理して
なんだか、
新しい私になれる気がするんです」
その言葉は、
昨日よりもずっと強く響いた。
タダシの胸に灯った揺れと決意

タダシは静かに思った。
ミクさんは、変わっていく。
前に進んでいく。
そのスピードは、時々少し怖いくらいだ。
でも同時に
- その変化を支えたい。
- そばで見守りたい。
- ミクさんが選ぶ人生を、応援したい。
ミクさんは、タダシの表情に気づいたのか、
そっと言った。
「タダシさん。
変わることは、怖いですか?」
タダシは少しだけ目を伏せた。
「はい。
でも、ミクさんが選ぶなら
私は支えます」
ミクさんは、ゆっくり微笑んだ。
「ありがとうございます。
タダシさんがいてくださると、
私は安心して変われます」
その笑顔は、
工房の木の香りよりもあたたかかった。





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