第40話 ミクさんが見せた新しい一歩

第40話 悩んでもいい
サンタ第2工房の関係者たち…
木工作家さん
小物作家
かわいいのは
やっぱり
動物かな?
木工職人さん
木工職人
徹底的な仕上げが
かわいさの秘訣!

アパートを引き払った翌日。
サンタ第2工房の朝は、いつもと同じ木の香りがしていた。
けれどタダシの胸の奥には、
昨日までとは違う空白が静かに残っていた。

ミクさんの倉庫だったあの部屋。
木の宝の山が積み上がっていたあの空間。
ミクさんの10年分の歴史が詰まっていたあの場所。

その扉が閉じたことを、
タダシはまだ受け止めきれていなかった。

工房に入ると、ミクさんはいつもより軽やかだった

扉を開けると、
ミクさんは作業台の前で木片を並べていた。

「こんにちは、タダシさん」

その声は、昨日よりも少しだけ明るかった。
まるで、何かを吹っ切ったような軽さがあった。

タダシは思わず聞いた。

「ミクさん
 今日は、なんだか軽やかですね」

ミクさんは、木片を持ち上げながら言った。

「はい。
 身軽になった気がするんです。
 あのアパートを引き払って
 なんだか、肩の荷がひとつ下りたようで」

タダシは胸が少しだけ痛くなった。

(ミクさんは前に進んでいる
 でも、私はまだ昨日の場所に立ち止まっている気がする)

ミクさんの新しい生活の第一歩は、意外なところから始まった

ミクさんは、工房の奥の棚を指さした。

「タダシさん。
 今日から、この棚を新しい生活の棚にします」

タダシは首をかしげた。

「新しい生活の棚ですか?」

ミクさんは、少し照れたように笑った。

「はい。
 あのアパートに置いていたものを、
 ここに少しずつ移していくんです。
 ただ置くだけじゃなくて
 これからの私に必要なものだけを並べます」

タダシは息をのんだ。

(ミクさんは
 断捨離じゃなくて、
 再構築をしているんだ)

ミクさんは、古い木の車を棚に置きながら言った。

「これは、初期の作品です。
 でも、まだ好きなので残します」

次に、積み木の試作品を置いた。

「これは
 タダシさんに差し上げた箱と同じシリーズです。
 私のはじまりなので、ここに置きます」

そして、棚の一番上に小さな木の鳥を置いた。

「これは
 これからの私の象徴です。
 飛び立つ鳥ですから」

タダシは胸が熱くなった。

(ミクさん
 あなたは本当に、前に進む人なんだ)

タダシの胸に灯ったさみしさと誇らしさ

棚が少しずつ埋まっていくのを見ながら、
タダシは静かに思った。

ミクさんは、過去を捨てたんじゃない。
必要なものだけを持って、未来へ進もうとしている。
その未来に、自分はどれくらい関われるんだろう。

ミクさんは、タダシの表情に気づいたのか、
そっと言った。

「タダシさん
 昨日は、さみしかったですよね」

タダシは少しだけ目を伏せた。

「はい。
 あの部屋は、ミクさんの歴史でしたから」

ミクさんは、ゆっくり微笑んだ。

「タダシさん。
 歴史は場所じゃなくて
 人の中に残るんですよ」

昨日と同じ言葉。
でも今日は、もっと深く響いた。

ミクさんがタダシに見せた新しい一歩

棚の整理が終わると、
ミクさんはタダシのほうを向いた。

「タダシさん。
 これから、もっと身軽に生きます。
 でも
 タダシさんには、これまでと同じように
 そばにいていただけたら嬉しいです」

タダシは胸が熱くなった。

「はい。
 もちろんです」

ミクさんは、少しだけ照れたように笑った。

「では
 新しい生活の第一歩、見守ってくださいね」

その笑顔は、
工房の光よりもあたたかかった。

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