サンタ第2工房の朝。
タダシが扉を開けると
工房の空気が、また昨日と違っていた。
棚の配置がさらに変わり、
商品が減り、
床が広くなり、
そしてミクさんの動きがやっぱり軽い。
まるで、
ミクさん自身が新生活の風になっている
ようだった。
ミクさん、さらに加速する

「こんにちは、タダシさん」
ミクさんは、木片を抱えながら言った。
その声は、昨日よりもさらに軽やかだった。
タダシは思わず言った。
「ミクさん
また棚の配置が変わっていますね」
ミクさんは、木の鳥を棚の上に置きながら言った。
「はい。
新しい生活を始めたら
工房ももっと軽くしたくなって」
タダシは苦笑した。
「昨日も同じことを聞いた気がしますが
今日はさらに加速していますね」
ミクさんは、少し照れたように笑った。
「はい。
軽くなるって、気持ちいいんです」
ミクさん、突然の新しいお願いをする
棚の整理が終わると、
ミクさんはタダシのほうを向いた。
「タダシさん。
今日、お願いしたいことがあるんです」
タダシは少し身構えた。
「なんでしょうか?」
ミクさんは、真剣な顔で言った。
「タダシさんには
工房の記録係になっていただきたいんです」
タダシは固まった。
「記録係ですか?」
ミクさんはうなずいた。
「はい。
工房の変化や、棚の配置、
どんな商品があって、どんなふうに並べたか
そういう変化の記録を残していただきたいんです」
タダシは驚いた。
「ミクさん
どうして記録を?」
ミクさんは、木片をそっと置きながら言った。
「新しい生活を始めたら
自分がどう変わっていくのか、
ちゃんと見ておきたいんです」
タダシは胸が熱くなった。
(ミクさん
あなたは本当に、前に進む人なんだ)
タダシ、記録係として巻き込まれる

その瞬間から、
タダシは完全に巻き込まれた。
「タダシさん、この棚の写真を撮ってください」
「タダシさん、今日の配置をメモしておいてください」
「タダシさん、この商品は残すに分類してください」
「タダシさん、これは未来の棚に入れてください」
タダシは汗をかきながら言った。
「ミクさん
今日の私は、ほぼ工房の秘書ですね」
ミクさんは、くすっと笑った。
「はい。
タダシさんは今日、秘書さんです」
その笑顔は、
工房の光よりもあたたかかった。
ミクさんの新しい生活は、心の中にも広がっていた

記録係としての作業が終わると、
ミクさんは棚の前に立ちながら言った。
「タダシさん
私、最近思うんです」
タダシは少し身を乗り出した。
「何をですか?」
ミクさんは、木の鳥をそっと撫でながら言った。
「身軽になると
心も軽くなるんですね」
タダシは息をのんだ。
ミクさんは続けた。
「アパートを引き払って
家の中を片づけて
工房も整理して
なんだか、
新しい私になれる気がするんです」
その言葉は、
昨日よりもずっと強く響いた。
タダシの胸に灯った揺れと決意

タダシは静かに思った。
ミクさんは、変わっていく。
前に進んでいく。
そのスピードは、時々少し怖いくらいだ。
でも同時に
その変化を支えたい。
そばで見守りたい。
ミクさんが選ぶ人生を、応援したい。
ミクさんは、タダシの表情に気づいたのか、
そっと言った。
「タダシさん。
変わることは、怖いですか?」
タダシは少しだけ目を伏せた。
「はい。
でも、ミクさんが選ぶなら
私は支えます」
ミクさんは、ゆっくり微笑んだ。
「ありがとうございます。
タダシさんがいてくださると、
私は安心して変われます」
その笑顔は、
工房の木の香りよりもあたたかかった。





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