広島駅前徒歩8分。
サンタ第2工房の午後は、木の香りと、タダシさんの図面を見つめる時間が今日も長かった。
その日の夕方。
タダシさんは、作業台の前で腕を組んだまま動かなくなっていた。
ミクさんは、横目でその様子を見ながら思った。
(また図面の沼に落ちてるわね)
しばらくして、タダシさんがぽつりと言った。
「ミクさん。ちょっと相談してもいいですか」
「どうしたの?」
「最近、作業に入るまで時間がかかってしまって。
頭ではやらなきゃと思ってるんですけど、体が動かなくて」
ミクさんは、コーチング講座で学んだ内容を思い出した。
(ああ。これ、まさに切り替えが苦手な人の典型ね)
「タダシさん、いいわよ。話して」
「ミクさんに迷惑かけてる気がして。どうしたらいいのか……」
ミクさんは、優しく、しかし、はっきりと言った。
「じゃあ、今日から私があなたの切り替えスイッチになりますね」
「えっ?」
「タダシさんは悪気がないし、どちらかというと素直だから、
声かけを変えればすぐ動けるのよ。
だから、私が導くからね」
タダシさんは、少し安心したようにうなずいた。
📘ミクさんがタダシさんを導くための実践編
以下は、ミクさんがタダシさんに使っている
コーチング式の声かけを
タダシさん向けにまとめたものです。
01 まずは状況を言語化する
最初の一歩:タダシさんが動けない理由を自身の言葉で整理できるようにする。「タダシさん、今どのあたりで止まってる感じ?」
- 「今、どこで止まってる感じですか?」と聞く
- 図面なのか、段取りなのか、迷いなのかを一緒に確認する
- 言語化できると、本人が落ち着きやすい
02 時間の見通しをたてる
切り替えの準備:あと何分で動けるかをタダシさんが決めることで、脳が切り替えやすくなる。「あと何分で作業を始められそう?」
- 命令ではなくタダシさんが決めるのがポイント
- 5分でも10分でもいいので、タダシさんが選ぶ
- 選んだ時点で、行動のハードルが下がる
03 タイマーで優しく背中を押す
行動スイッチ:時間を見える化すると、タダシさんの脳が自然に動き出す。「タイマーつけたから、鳴ったら始めましょうね」
- タイマーをセットして、強制ではなく合図にする
- 「タイマー鳴ったら始めましょうね」と優しく伝える
- プレッシャーではなく合図として使う
04 できている部分を先に認める
モチベ維持:人はできているところを認められると、素直に次の行動へ進める。「もう準備始めてるのね。あと一歩ね」
- 準備だけでも褒める
- 「あと一歩ですね」と未来形で声をかける
- 行動のハードルが下がる
05 次の行動を一緒に決める
行動の明確化:次に何をするかが明確になると、迷いが減って動きやすくなる。「次は、どのようにしたらいいですかね?」
- 「次はどうしたらいい?」と本人に考えさせる
- 決めたら一緒に確認する
- 行動の迷いが消える
06 終わった後の楽しみを提示する
ご褒美効果:終わった後の楽しみがあると、行動のスピードが上がる。「作業が終わったあと、何しましょうか?」
- 「終わったら何しましょうか?」と未来の楽しみを提示
- 行動のモチベーションが自然に上がる
- プレッシャーではなく期待感で動く
🌙タダシさんがホントに動き出す

「タダシさん、あと何分で作業始められそう?」
「10分くらいでいけます」
「じゃあタイマーつけるわね。鳴ったら始めましょう」
「はい」
10分後。
タイマーが鳴ると、タダシさんは自然に体を動かし始めた。
「ミクさん、作業入ります」
「いいわね。準備もできてるし、あと一歩だったわよ」
タダシさんは、少し照れながら笑った。
「ミクさんありがとうございます。
こうやって言われると、すごく動きやすいです」
「タダシさんは素直だから、
声かけを変えるとすぐ動くのよ。
だから、これからもちゃんと導くからね」
タダシさんは、胸の奥が
じんわり温かくなるのを感じた。





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