サンタ第2工房の午後は、木の香りと、タダシさんの「図面を見つめる時間」が今日も長かった。
作業台の前で腕を組み、じーっと図面を見ているタダシさん。
ミクさんは、その様子を横目で見ながら声をかけた。
「タダシさん、ちょっといい?」
「はい、なんでしょう」
ミクさんは、コーチング講座で学んだ内容を思い出しながら話し始めた。
🌟ミクさんの人が集まる技術講座
「タダシさん、人が集まる人ってね、性格じゃなくて技術なのよ」
「技術ですか?」
「そう。楽しそうにしている人のところに人が集まるって言うけど、
あれは楽しそうに見える技術を使ってるの」
タダシさんは、少し驚いた顔をした。
「技術?そんなものがあるんですね」
「あるのよ。しかも三つだけ。簡単だから今日からできるわ」
ミクさんは、指を三本立てた。
①面白がる対象が小さい
「人が集まる人ってね、大きな喜びを待ってないの。
お天気、食べ物、道で見かけたもの、
ご飯中に箸を落としたことまで、面白がれるのよ」
「箸を落としたことまで?」
「そう。くだらないほどいいの。
毎日、小さな楽しみを見つけられる人は、自然と雰囲気が明るくなるのよ」
②不機嫌を人前に置かない
「ご機嫌が斜めの日は誰にでもあるわ。
でも、人が集まる人は
不機嫌を出す場所を選んでるの」
「なるほど」
「工房で不機嫌を出さないだけで、
周りの空気が変わるのよ」
③人の話を面白がって聴く
「評価しないで話を聴いてもらえるとね、
人はまた、その人に話したくなるの」
「確かにそうですね」
「だから、人が集まるのは楽しそうだからじゃなくて、
面白がる練習を重ねた結果なのよ」
🌱今日からできるのは①だけ

ミクさんは、タダシさんの目を見て言った。
「今日からできるのは①よ。
今日、小さく面白かったことを一つだけ見つけてみて」
「小さく面白かったこと」
タダシさんは、うーんと考えた。
そして、ぽつりと言った。
「自転車のタイヤに空気を入れたら、
すごくスピードが出るようになって
乗り心地が良くなったことです。
こんなことなら、
もっと前に空気を入れておけばよかった、なんて」
ミクさんは、ふっと笑った。
「いいじゃない。そういうのでいいのよ。
それが面白がる技術の第一歩なの」
「第一歩ですか」
「そう。そういう小さな面白さがね、
お客様とのつながりのもとになるのよ」
タダシさんは、少し照れながらうなずいた。
「ミクさん、なんだか、少しわかった気がします」
「わかれば十分よ。
一週間続けたら、周りの反応が変わるわよ」
工房には、木の香りと、
ミクさんのコーチングに導かれて
少し成長したタダシさんの気配が
静かに漂っていた。





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