広島駅前徒歩8分。
サンタ第2工房の午前は、木の香りと、タダシさんの「図面を見つめる沈黙」から始まる。
今日もタダシさんは、作業台の前で腕を組み、図面をじーっと見つめていた。
ミクさんは、その姿を見て、ふっと笑った。
(昔の私なら、ここで早く作業始めてくださいって言ってたわね)
今は違う。
コーチングを学んだことで、ミクさんの声かけはすっかり変わった。
「タダシさん、あと何分で作業始められそう?」
「えっと、10分くらいでいけます」
「じゃあ、10分後に始めましょうね。タイマーつけておくわ」
「はい」
タダシさんは、素直に動き出した。
(ほんと、変わったわね。私も、タダシさんも)
🌱昔のクセを思い出す
昼休み。
ミクさんは、工房の台所でお湯を沸かしながら、ふと、自分の昔を思い出した。
(私はずっと、自分を責めてばかりだった)
・うまくいかないのは自分のせい
・相手が動かないのは自分の言い方が悪いから
・もっと完璧にやらなきゃ
・私が全部やらないといけない
そんなふうに思い込んでいた。
でも、コーチングを学んで気づいた。
うまくいかないのは、私のせいじゃない。
気づいた今から変えればいい。
その気づきは、ミクさんの心を軽くした。
🔧自分も変わっていく
午後。
タダシさんが、作業の準備だけしてまた図面に戻ってしまった。
昔のミクさんなら――
「まだ始まってないのですか?」
と言っていた。
今のミクさんは違う。
「もう、作業の準備始めているのですね。あと一歩ですね」
タダシさんは、照れたように笑って作業に戻った。
(できてるところを認めると、人って素直になるのよね)
ミクさんは、自分自身にも同じ声かけをするようになった。
「私の言い方が悪かったのかもしれない」
→「期限内に納品できたんだから、それだけで合格」
「もっと完璧にやらなきゃ」
→「できているところを認めればいい」
「私が全部やらないと」
→「任せられるところは任せていい」
少しずつ、ミクさん自身も変わっていった。
🌙夕方、ミクさんは静かに気づく

作業が終わり、工房の片付けをしていると、
タダシさんがぽつりと言った。
「ミクさん、今日もありがとうございました。
声かけがあると、すごく動きやすいです」
ミクさんは、少し笑った。
「タダシさんが素直だからよ。
でもね、私も昔は、
タダシさんみたいに
動けない日があったのよ」
「えっ、ミクさんが、ですか?」
「そうよ。自分を責めてばかりで、
できない自分を許せなかったの」
タダシさんは、驚いたように目を丸くした。
「でもね、気づいたの。
変わるのは、今日からでいいって」
ミクさんは、窓の外の夕焼けを見ながら続けた。
「だから、タダシさん、
あなたにも言ってるのよ。
あと一歩ですねって。
それは、昔の私にも言ってあげたい言葉なの」
タダシさんは、静かにうなずいた。
「ミクさんなんだか、すごくわかります」
ミクさんは、少し照れたように笑った。
「まあ、私もまだ練習中よ。
タダシさんと一緒に、少しずつ変わっていくの」
工房には、木の香りと、
ミクさんの自分を許す優しさが静かに漂っていた。





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