サンタ第2工房の昼下がり。
タダシさんは、作業台で端材を整理しながら、ふとため息をついた。
(昨日の夕食、お腹いっぱいなのに全部食べちゃったんだよな
あれ、完全にもったいないの呪いだったな)
そんなことを考えていると、ミクさんが声をかけてきた。
「タダシさん、なんか難しい顔してるわね。どうしたの?」
「いえ。もったいないって何なんだろうって、ちょっと考えてまして」
ミクさんは、少し笑った。
「いいじゃない。じゃあ、今日は、もったいないについて説明しましょうか」
タダシさん、昨日のもったいない事件を語る
「昨日、友人と食事したんですけど
料理が少し残ってて、つい、もったいないと思って全部食べちゃったんです。
お腹が苦しくて後悔しました」
ミクさんは、うんうんと聞いている。
「それで思ったんです。
もったいないって、本当に良いことなんですかね?」
ミクさんは、作業台に手を置いて言った。
「タダシさん、それね。日本人がよくやるもったいないの呪縛よ」
ミクさん、もったいないの裏側を語る
「もったいないってね、
実は損得勘定や焦りが隠れてるのよ」
「損得ですか?」
「そう。今買わないと損する、捨てたら悪い、逃したら二度と手に入らない。
そういう気持ちがね、心をざわつかせるの」
タダシさんは、思い当たる節がありすぎて、うなずきすぎた。
「確かに。スーパーの値引きシールを見ると、必要なくても買っちゃいます」
「でしょ?それ、うちの母もそうだったし、あなたもそうよね」
「はい(泣)」
タダシさん、身に覚えがありすぎる隠れもったいない
「図書館で本を借りるんですけど、読む時間ないのに借りちゃって
翌週そのまま返すんです」
「それ、完全にもったいないの呪いね」
「らじるらじるの音源も、聞ききれないほどダウンロードしてしまいます」
「欲張りねえ」
「QUOカードも、現金なら買わない菓子パンを買ってしまいます」
「それはまあ、わかるわ」
ミクさんは、笑いながらも真剣に聞いてくれる。
兄弟の話を思い出すタダシさん
「そういえば兄が言ってたんです。
買うと高いけど、待ってると大概のものは手に入るって。
電子レンジもエアコンも、古民家を再生してると自然に集まるらしくて」
ミクさんは興味深そうに聞く。
「それで僕も古民家を手に入れたら、いろいろ集まるのかなって思ったんですけど
3分考えていや、自分は呼ばれてないなって諦めました」
ミクさんは吹き出した。
「3分で悟ったのね。いい判断よ」
ミクさん、究極のもったいないを語る
「タダシさん、もったいないってね、
物だけじゃなくて、人生にも出てくるのよ」
「人生ですか?」
「せっかくだから続けよう、チャンスだからやめられない。
そうやって、自分の心や時間を、本当に大切なものから遠ざけることがあるの」
タダシさんは、静かに聞いていた。
「もったいないからと、自分の心に嘘をついて人付き合いを続けたり、
せっかくだからと不必要なことに時間を使ったり
それが、究極のもったいないなのよ」
タダシさんは、胸にズシンときた。
(僕、けっこうやってるな)
ミクさん、最後にそっと諭す
「タダシさん。
神様はね、必要なものを必要なときにちょうどよく与えてくれるのよ」
「ちょうどよく?」
「だから、もったいないからと抱え込む必要はないの。
必要ないものは手放していいのよ」
タダシさんは、深くうなずいた。
「ミクさんなんか、心が軽くなりました」
「そう?ならよかったわ。
じゃあタダシさん、今日の質問ね」
ミクさんは、少し笑って言った。
「今日、小さく面白いと思ったことは何ですか?」
タダシさんは、少し照れながら答えた。
「糸鋸を修理していたんですけど、スピードコントローラー付きだったから、自分には無理かもな、と思っていたんです。試しに、カーボンブラシのふたを開けたら、木くずが少し溜まっていて、もう一度ふたを閉めたら、動くようになりました。おかげで心、ウキウキなんです。」
ミクさんは、満足そうにうなずいた。
「いいじゃない。そういう小さな面白さがね、
お客様とのつながりのもとになるのよ」
工房には、木の香りと、
もったいないを手放して少し軽くなったタダシさんの気配が
静かに漂っていた。





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