第71話 雨の日の小さな災難

悩んでもいい第71話 サンタ第2工房
悩んでもいい第71話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

雨が降り出しそうな、薄暗い夕方のことだった。

「サンタ第2工房」の店先をふと見ると、一人の女性が困り果てた顔で自転車と格闘していた。
どうやら、自転車のチェーンが外れてしまって動かなくなっているらしい。

「あ、あの…」

いつもお店の前をよく通っている気がするけれど、なぜかこれまで挨拶を交わしたことはない女性だった。
見かねたミクさんは、工房の奥に向かって声を張り上げた。

「タダシさん、ちょっと!」

呼ばれて慌てて飛び出してきたタダシさんは、状況を察知すると「任せてください!」と頼もしく袖をまくった。

路上での大奮闘

「うーん、なかなか手強いな」

タダシさんは道端にしゃがみこみ、外れたチェーンを直そうと格闘し始めた。ミクさんもそばで懐中電灯を照らしながら応援する。

「タダシさん、大丈夫ですか? フレームが歪んでたりして、チェーンが外れやすいんじゃないですかね?」

「うーん、パッと見はどこも折れたり曲がったりしてないんだけどなあ…」

暗くなりかけた路上で、二人がかりであーでもないこーでもないと言いながらの共同作業が続く。

そして数分後。ガチャリと音がして、無事にチェーンが元の位置へと収まった。

「直った!」

女性は「本当にありがとうございました!」と何度も頭を下げ、ホッとした顔で自転車を押して帰っていった。

真っ黒な手と、お化粧落としの秘密

「ふぅ、なんとかなってよかったですね」

一件落着とばかりに立ち上がったミクさんだったが、ふと自分の手を見て絶句した。
ミクさんは手が汚れないように気を配っていたはずなのに、修理を手伝っているうちに、手のひらは見事に真っ黒になってしまっている。

「わっ、私まで真っ黒!」

横を見ると、修理を頑張ったタダシさんの両手も、まるで炭鉱帰りのように真っ黒だった。二人で顔を見合わせて思わず苦笑いする。

その後、困っていた女性は相変わらず挨拶には寄ってこなかったけれど、ミクさんは「まあ、いっか。人助けできたんだしね」と笑った。タダシさんも「ですね、困ったお互い様だし、人助けできてよかったです」と大きくうなずいた。

それにしても、このドタバタな二人の共同作業は、ミクさんとタダシさんの距離をさらにぐっと縮めたのだった。

さて、問題はこの真っ黒な手だ。

ミクさんは工房に入ると、「ちょっと待ってて」と、いつも木工用ニスが手についたときに使っている『肌に優しいお化粧(アイシャドウ)落とし』を持ってきた。

「ほら、これつけて洗うと落ちやすいんですよ」

タダシさんの手にもそれをポンとつけてあげて、二人並んで仲良く水道で手を洗い始めた。

タダシさんは心の中で「うわー、これ結構いいやつじゃん…。もったいないなぁ」と思いつつも、ふんわりと漂う優しい香りに鼻をくすぐられる。

きれいに汚れが落ちた自分の手を見つめながら、タダシさんは顔をほころばせた。

「うわ、本当だ…。すごくきれいになったうえに、めっちゃいいにおいがする!」

雨雲が近づく少し肌寒い夕方、サンタ第2工房の水道の脇には、ほっこりと温かい空気が流れていた。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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