サンタ第2工房の朝は、
木の香りと、まだ眠りきらない街の静けさがゆっくり混ざり合う時間だった。
タダシは、昨日ミクが作ってくれた手作りのお弁当の温度を胸に、
いつもより少し早い足取りで工房へ向かっていた。
扉を開けると、
ミクは作業台の前で、ひとり木片を磨いていた。
しかしその背中は、いつもより少しだけそわそわして見えた。
「おはようございます、タダシさん」
その声は、昨日よりも柔らかく、
どこか期待のようなものが混ざっていた。
朝の忙しさの中で作られたやさしさ
タダシが近づくと、
ミクは作業台の横に置いていた紙袋をそっと持ち上げた。
「今日も作ってきちゃいました」
タダシは固まった。
「えっ?今日も?」
ミクは、少し照れながら言った。
「はい。
タダシさん、昨日すごく喜んでくれたから
また食べてほしくて」
その言葉は、
工房の木の香りよりもあたたかかった。
タダシは思った。
(ミクさんは、私のために朝の時間を使ってくれたんだ)
朝の時間は、誰にとっても貴重だ。
忙しい。
慌ただしい。
余裕なんてない。
その時間を使って、
タダシのためにお弁当を作ってくれた。
それは、
言葉よりもずっと強いやさしさだった。
ミクの本音がこぼれた瞬間
ミクは、少しだけ目を伏せた。
「タダシさん
私ね、誰かにありがとうって言われるの、好きなんです。
仕事でも、プライベートでも
あまり言われることがないから」
タダシは、胸がぎゅっとなった。
「ミクさん
昨日のお弁当、本当に嬉しかったです。
今日もありがとうございます」
ミクは、ゆっくりと微笑んだ。
「よかった」
その笑顔は、
昨日よりも少しだけ柔らかく、
そして少しだけあたたかかった。
お弁当の温度は、心の温度だった
タダシは、お弁当の包みをそっと開いた。
卵焼き、焼き魚、ほうれん草のおひたし。
昨日と同じようで、
どこか違う。
ミクは言った。
「今日の卵焼き、ちょっと甘くしてみました。
タダシさん、甘いの好きかなって」
タダシは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
(ミクさんは、私のことを覚えてくれているんだ)
お弁当の温度は、
ただの料理の温度ではなく、
ミクの心の温度だった。
二人の距離がまた少し縮まった朝
食べ終えたあと、
ミクは静かに言った。
「タダシさん
また作りますね。
朝、ちょっと早起きして」
タダシは、胸が熱くなった。
「はい。
また食べたいです」
ミクは、ふっと笑った。
「よかった」
その笑顔は、
工房の光よりもやさしく、
タダシの胸に深く沈んだ。
その日、工房を出るとき、
タダシの胸の奥は、
お弁当の温度のようにじんわりと温かかった。
ミクが朝の忙しい時間にお弁当を作る理由は、
タダシを必要としているからだった。


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