サンタ第2工房の昼下がりは、
木の香りと、ゆっくり流れる時間が混ざり合う。
タダシは、いつものように作業物を抱えて工房へ向かっていた。
しかし今日は、胸の奥が少しだけざわついていた。
ミクさんが朝に作ってくれたお弁当の温度が、
まだ心の中に残っていたからだった。
🍳 工房の奥にある小さなキッチン
工房の扉を開けると、
ミクは、いつものように木片を磨いていた。
しかし、どこか落ち着かない様子だった。
「こんにちは、タダシさん」
その声は、昨日より少しだけ明るかった。
タダシは、作業台の横に立ち、
ミクの手元を見つめた。
「今日もかわいくなるまで磨くんですね」
ミクは、ふっと笑った。
「はい。
でも今日はちょっと違うんです」
タダシは首をかしげた。
「違う?」
ミクは、作業台の奥を指さした。
「キッチン、使っていいって言われたんです。
だから焼きそば、作ろうと思って」
タダシは固まった。
「焼きそばですか?」
ミクは、少し照れながら言った。
「はい。
タダシさん、好きかなって思って」
その言葉は、
工房の木の香りよりもあたたかかった。
🔥ミクの料理している姿は、職人とは違う顔だった
工房の奥にある小さなキッチンは、
普段はスタッフが簡単な飲み物を作るだけの場所だった。
しかし今日は、
ミクがフライパンを温め、
野菜を切り、
麺をほぐしていた。
その姿は、
いつもの職人の顔ではなく、
どこか家庭的で、
少しだけ楽しそうだった。
タダシは、キッチンの入り口で見守りながら言った。
「ミクさん、料理してる姿
なんか、いいですね」
ミクは、照れながら言った。
「やめてくださいよ。
恥ずかしいじゃないですか」
しかし、その声は嬉しそうだった。
🍜 焼きそばの香りが工房を満たしていく
フライパンから立ち上る湯気が、
木の香りと混ざり合って、
工房の空気をやさしく変えていく。
ミクは、ソースを絡めながら言った。
「タダシさん、
こういうの、好きでしょ?」
タダシは、胸が熱くなった。
「はい。
すごく好きです」
ミクは、ふっと笑った。
「よかった。
タダシさんのために作ってるんですから」
その言葉は、
タダシの胸の奥に静かに沈んだ。
(ミクさんは、私のために料理をしてくれているんだ)
🥢 二人で食べる焼きそばの午後
キッチンの横の小さなテーブルに、
焼きそばが置かれた。
湯気が立ち上り、
ソースの香りが広がる。
タダシは、箸を持ちながら言った。
「ミクさん
本当にありがとうございます」
ミクは、少し照れながら言った。
「いいんですよ。
タダシさん、いつもがんばってくれてるから」
二人は、静かに食べ始めた。
焼きそばは、
驚くほどおいしかった。
麺はもちもちで、
野菜はシャキシャキで、
ソースは甘くて、
どこか懐かしい味がした。
タダシは、思わず言った。
「ミクさん
これ、すごくおいしいです」
ミクは、少しだけ嬉しそうに言った。
「よかった。
料理、好きなんです。
誰かに食べてもらうの、もっと好きなんです」
タダシは、ミクの横顔を見つめた。
その横顔は、
いつもの職人の顔ではなく、
どこか柔らかくて、
少しだけさみしそうだった。
🌙 タダシの胸に落ちたもの
食べ終わったあと、
ミクは静かに言った。
「タダシさん
また作りますね。
焼きそばでも、お弁当でも」
タダシは、胸が熱くなった。
「はい。
また食べたいです」
ミクは、ふっと笑った。
「じゃあ
また作りますね」
その言葉は、
タダシの胸の奥に静かに沈んだ。
(ミクさんは、私を必要な人として見てくれているんだ)
その日、工房を出るとき、
タダシの胸の奥は、
焼きそばの温度のようにじんわりと温かかった。


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