第13話 ミクのチェックは芸術家の眼

迷ってもいい
サンタ第2工房関係者の抱負…
木工作家さん
小物作家
次は、かわいい
ブランコを作って
みますね。
木工職人さん
木工職人
問題は、四角い積み木を
どうやって
かわいくするか、だ。

サンタ第2工房の午後は、
木の香りと静かな光がゆっくり混ざり合う時間だった。
タダシは、昨日ミクが見せたかわいいの肯定を胸に、
今日も工房へ向かっていた。

扉を開けると、
ミクは作業台の前で、ひとり木片を並べていた。
その指先は、まるで木と会話しているように静かに動いていた。

「こんにちは、タダシさん」

その声は、昨日よりも少しだけ柔らかかった。

ミクのチェックは見るではなく感じる

タダシが作業台の横に立つと、
ミクは木片をひとつ手に取り、
光にかざした。

「タダシさん、これ
 昨日の続き、見てもいいですか?」

タダシは、少し緊張しながら木片を差し出した。

ミクは、ゆっくりと木片を手に取り、
光にかざし、
角を指でなぞり、
重さを確かめた。

その動きは、
まるで木の気持ちを聞いているようだった。

そして
ミクの目が、ほんの少しだけ細くなった。

「この子、まだかわいくないですね」

タダシは固まった。

「えっ?かわいくないんですか?」

ミクは、木片をそっと置きながら言った。

「はい。
 形がね、まだ自分らしくないんです」

その言葉は、
タダシの胸に静かに落ちた。

芸術家の眼は未来を見る

ミクは、木片を指先でなぞりながら言った。

「この角度だとね
 子どもが持ったときに、指が痛いんです」

タダシは驚いた。

「持ってないのに、分かるんですか?」

ミクは、ふっと笑った。

「分かりますよ。
 木の形ってね、未来が見えるんです」

タダシは息をのんだ。

(ミクさんは、木の形の奥にある使う人の未来まで見ているんだ)

ミクは続けた。

「かわいいってね
 使う人が幸せになる形なんですよ」

その言葉は、
工房の静けさよりも深く、
タダシの胸に染み込んだ。

ミクのチェックは心を見る

ミクは、タダシの作った木片をもう一度光にかざし、
ゆっくりと言った。

「タダシさん
 この子、がんばって作ったのは分かるんです。
 でもね、がんばりすぎるとかわいくなくなるんですよ」

タダシは、胸が少し痛くなった。

「がんばりすぎるとかわいくない?」

ミクはうなずいた。

「はい。
 木も人もね、無理してるとかわいくないんです。
 でも、自分らしくなると
 自然とかわいくなるの」

その言葉は、
タダシの胸の奥にある劣等感のかたまりを
そっと包み込んだ。

タダシの胸に落ちたもの

ミクは、木片をそっと置きながら言った。

「タダシさん
 また作ってみてくださいね。
 タダシさんのかわいい、もっと見たいです」

タダシは、胸が熱くなるのを感じた。

「はい。
 また作ります」

ミクは、ふっと笑った。

「楽しみにしてます」

その笑顔は、
昨日よりも少しだけ柔らかく、
そして少しだけあたたかかった。

タダシは思った。

ミクさんのチェックは、形を見るのではなく、心を見る。
芸術家の眼は、木の未来と人の未来を同時に見ている。
二人の距離は、確かにまたひとつ近づいた。

その日、工房を出るとき、
タダシの胸の奥は、
昨日より少しだけ温かかった。

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