第19話 かわいくなるまで磨く職人魂

迷ってもいい 第19話 サンタ第2工房
迷ってもいい 第19話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

サンタ第2工房の午後は、
木の香りと静かな光がゆっくり混ざり合う時間だった。
昨日、タダシが癇癪を起こし、
ミクが静かに境界線を引いたあの出来事は、
二人の間に小さな痛みと理解を残していた。

その痛みは、
二人の距離を遠ざけるものではなく、
むしろ近づけるための必要な揺れだった。

タダシは、その揺れを胸に抱えながら、
今日も工房へ向かっていた。

ミクの指先は今日も静かに木と話していた

扉を開けると、
ミクは作業台の前で、ひとり木片を磨いていた。

しかしその指先は、
昨日よりも少しだけ丁寧で、
少しだけ慎重で、
少しだけ優しかった。

「こんにちは、タダシさん」

その声は、
昨日の出来事をそっと包み込むような柔らかさがあった。

タダシは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

「かわいくなるまで磨く」その言葉の本当の意味

ミクは、木片を光にかざしながら言った。

「タダシさん
 昨日のこと、気にしなくていいですよ」

タダシは、少しだけ目を伏せた。

「でも
 ミクさんを怖がらせてしまって」

ミクは、首を横に振った。

「怖かったわけじゃないんです。
 ただ
 木と同じで、人にも磨く時間が必要なんですよ」

タダシは、息をのんだ。

ミクは続けた。

「木ってね、
 削りすぎてもダメだし、
 削らなすぎてもダメなんです。
 その子が自分らしくなるまで磨くんです」

その言葉は、
タダシの胸の奥に静かに落ちた。

(ミクさんは、木を磨くように人と向き合っているんだ)

ミクの職人魂は人にも向けられていた

ミクは、タダシの作った木片を手に取り、
指先で角をなぞった。

「この子ね
 昨日よりかわいくなってますよ」

タダシは驚いた。

「えっ?昨日と同じものなのに?」

ミクは、ふっと笑った。

「タダシさんの気持ちが変わったからですよ。
 木はね、作った人の心を吸うんです」

タダシは、胸が熱くなった。

(私の心が変わったから、木の形も変わった?)

ミクは続けた。

「タダシさんは、昨日自分を磨いたんですよ。
 だから、この子もかわいくなったんです」

その言葉は、
タダシの胸の奥に深く沈んだ。

「かわいくなるまで磨く」それはミクの生き方だった

ミクは、木片をそっと置きながら言った。

「私ね
 木も、人も、
 かわいくなるまで磨くのが好きなんです」

タダシは、静かに聞いた。

「かわいいってね
 その子が自分らしくなった瞬間なんですよ。
 木も、人も」

タダシは、胸がじんわり温かくなった。

(ミクさんは、私のこともかわいくなるまで磨こうとしてくれているんだ)

それは、
職人としての魂であり、
人としての優しさであり、
ミクの生き方そのものだった。

二人の距離がまた少し縮まった午後

ミクは、タダシの方を見て言った。

「タダシさん
 昨日みたいなことがあってもいいんですよ。
 人は、磨かれてかわいくなるんですから」

タダシは、深くうなずいた。

「はい。
 私も
 ミクさんに磨かれてる気がします」

ミクは、照れながら笑った。

「じゃあ、
 これからも磨きますね。
 タダシさんのかわいいが出るまで」

その笑顔は、
工房の光よりもやさしく、
タダシの胸に深く沈んだ。

その日、工房を出るとき、
タダシの胸の奥は、
木片のように少しだけ丸く、
少しだけ柔らかくなっていた。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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