広島駅前徒歩8分。
サンタ第2工房の朝は、木の香りと、みわさんの掃除機の音から始まる。
「ミクさん、ここ、昨日のままじゃない。ほら、木の粉が溜まってる」
みわさんは、ミクさんが言う前に掃除を始める。
綺麗好きというより、もはや職業
そして、清潔。
その横で、タダシさんは静かに作業台の整理をしていた。
みわさんは、ちらっと横目で見る。
(最近よく来るわね、この人)
🪵タダシはほとんど話さない
みわさんは、タダシさんと積極的に話すタイプではない。
理由は簡単。
「職人さんって、ちょっと横柄な人が多いから苦手なのよ」
ミクさんは笑いながら言う。
「タダシさんは横柄じゃないわよ。むしろ丁寧すぎるくらい」
「ふーん。まあ、いいけど」
みわさんは、興味があるような、ないような返事をする。
👀みわさんの観察

ある日。
みわさんが銀行の窓口へ行くため、タイムズカーシェアの予約をしようとしたら――
「えっ、全部埋まってるじゃない!」
ミクさんが苦笑する。
「みわさん、ギリギリまで予約しないからよ」
「だって、広島駅周辺なら絶対空いてると思うじゃない!」
そのとき、タダシさんが声をかけた。
「みわさん、もしよければ私が銀行までお送りしますよ。今日は車で来ていますので」
みわさんは一瞬固まった。
「え?あ、いや、別に」
「遠慮しなくて大丈夫ですよ。すぐ戻りますし」
みわさんは、少しだけ戸惑いながら助手席に乗った。
🚗車内でも沈黙
車内は静かだった。
みわさんは、窓の外を見ながら思った。
(この人、運転うまいわね
それに、車内も綺麗。ゴミひとつない)
タダシさんは、みわさんが緊張しているのを察して、必要以上に話さない。
「銀行、すぐですよ」
「ありがとう」
短い会話。
でも、みわさんは少しだけ印象が変わった。
(横柄じゃないのね、この人)
🧹工房でのすれ違い
翌日。
みわさんは工房の台所でスポンジを交換していた。
タダシさんが入ってきて、軽く会釈する。
「おはようございます、みわさん」
「おはよう。ここ、汚れてたから掃除してるの」
「いつもありがとうございます。助かります」
みわさんは、少しだけ驚いた。
(ちゃんとお礼言うんだ)
「別に、気になるからやってるだけよ」
「それでも、ありがたいです」
みわさんは、ほんの少しだけ頬がゆるんだ。
📦二人の距離をそっと補う
その日の夕方。
ミクさんがみわさんに話しかけた。
「みわさん、昨日タダシさんが銀行まで送ってくれたんでしょ?
あの人、気が利くのよね」
「まあ、悪くはなかったわよ」
「最近、工房のこともいろいろ手伝ってくれてるのよ。
ほら、昨日の納品も全部やってくれたし」
「ふーん」
みわさんは、興味があるような、ないような返事をしながら、
心の中では少しだけ思っていた。
(あの人、意外とちゃんとしてるのね)
🌙みわさん、タダシさんを認める
閉店後。
みわさんは、工房の床をモップがけしながら、ぽつりと言った。
「ミクさん。あの人、悪くないわね」
ミクさんは笑った。
「でしょ?丁寧で、真面目で、気が利くのよ」
「まあ、認めてもいいわ」
その言葉は、みわさんなりの最大級の賛辞だった。
タダシさんは、奥で作業台を片付けながら、
二人の会話を聞こえないふりをしていた。
でも、少しだけ嬉しそうだった。





コメント