第56話 静かに距離が縮まる

悩んでもいい第56話 サンタ第2工房
悩んでもいい第56話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

広島駅前徒歩8分。
サンタ第2工房の朝は、木の香りと、まだ少し眠そうなミクさんの足音から始まる。

タダシさんは、いつものように作業台の整理をしていた。

「おはようございます、ミクさん」

「おはよう、タダシさん。今日も早いわね」

その言葉は、以前より少し柔らかい。

🪵ミクさんは頼ることが苦手だった

ミクさんは、基本的に誰かに頼るのが苦手だ。

材木店時代から、
「自分でやるほうが早い」
「人に迷惑をかけたくない」
という気質が染みついている。

だから、タダシさんが工房に来るようになった当初も、
仕事を任せることに慎重だった。

しかし――

ある日、ミクさんが重い木材を運ぼうとして、
腰を少し痛めたことがあった。

「ミクさん、それは私が持ちますよ」

「え?いいのよ、これくらい」

「いえ、危ないです。任せてください」

そのときのタダシさんの声が、
驚くほど落ち着いていて、
ミクさんは思わず手を離した。

(あ、この人、任せてもいいんだ)

その瞬間から、二人の距離は少し変わった。

📞電話が二人の距離を縮めた

タダシさんが毎週、栗原市の実家に帰るようになってから、
ミクさんは時々電話をかけるようになった。

「タダシさん、今日の工房ね、田中さんがまた寸法間違えたのよ」

「そうなんですか。大変でしたね」

「ええ。でも、あなたがいないと静かすぎて。
なんだか変な感じなのよね」

その言葉は、
寂しいとまでは言わないけれど、
それに近い温度を持っていた。

タダシさんは、電話越しに少し照れながら答えた。

「明日には戻りますから。心配しないでください」

🧹みわさんは気づいている

みわさんは、工房の掃除をしながらぽつりと言った。

「ミクさん、あの人、最近よく来るわね」

「そうね。仕事が丁寧で助かってるのよ」

「ふーん。まあ、悪くはないわね」

みわさんは、ミクさんの表情をちらっと見た。

(ミク、ちょっと嬉しそうじゃない?)

でも、何も言わなかった。

🔧距離の取り方がうまい

タダシさんは、ミクさんに対して必要以上に踏み込まない。

  • 仕事の相談は丁寧に
  • プライベートには踏み込まない
  • でも、困っているときは自然に手を差し伸べる

その距離感が、ミクさんには心地よかった。

ある日、ミクさんが新しいデザインの試作品を見せたとき。

「タダシさん、これどう思う?」

「すごくいいと思います。ミクさんらしいです」

「らしいって、どういう意味?」

「木の使い方が、優しいんです。
子どもが触ったときのことをちゃんと考えてる」

ミクさんは、少しだけ照れた。

「ありがとう」

🌙安心を感じる

閉店後。
ミクさんは、工房の片隅で帳簿を閉じながら言った。

「タダシさん、あなたが来てくれるようになってから
工房が少し、安心できる場所になった気がするのよ」

タダシさんは、少し驚いたように目を上げた。

「そう感じていただけるなら、嬉しいです」

「ええ。ほんとにね」

その言葉は、
仕事の話でも、感謝でもなく、
信頼そのものだった。

🌲二人の関係は、ゆっくり深まっていく

ミクさんは、誰かに頼るのが苦手。
タダシさんは、必要以上に踏み込まない。

だからこそ、二人の距離はゆっくり、静かに深まっていく。

派手な出来事はない。
ドラマチックな展開もない。

でも――

工房の空気が少し柔らかくなる。
ミクさんの表情が少し穏やかになる。
タダシさんの声が少し優しくなる。

そんな変化が、確かにそこにあった。

サンタ第2工房は今日も稼働中。
木の香りと、二人の静かな信頼が、
広島の街にふわっと漂っている。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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