発達支援23:トテチテタ①

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発達支援23
はじめに(発達支援)

今回は就労継続支援B型作業所トテチテタでのお話です。お楽しみに!

登場人物紹介

タダシです。就労継続支援B型トテチテタの職業指導員です。

広島市の外れにある就労継続支援B型事業所「トテチテタ」は、朝になるといつも少しだけ騒がしい。
玄関の引き戸がガラガラと開くたび、利用者さんたちの声が重なり、コーヒーの香りと混ざって、なんとも言えない温かい空気が流れ込んでくる。

トテチテタ

私はタダシ、三十一歳。
ここで働き始めて五年目になる。

肩にかけたショルダーバッグには、いつもチラシの束がぎゅうぎゅうに詰まっている。

「タダシさん、おはようございます!」

元気よく声をかけてくるのは、利用者のユウタだ。
背は高いのに、笑うと子どもみたいに目が細くなる。

「今日はね、昨日より速く配れる気がするんですよ」

「お、いいね。でも焦らなくていいからね。ゆっくりで」

ユウタはうなずき、チラシの束を抱えて外へ出た。
タダシもその後ろを歩く。

もちろん、タダシが配った分はカウントに入らない。
ただ横を歩いて、見守るだけだ。

春の風が、チラシの端をぱらぱらと揺らした。

チラシ配り

トテチテタの周りは、昔ながらの商店街と住宅街が入り混じっている。

八百屋の前を通ると、店主のおばちゃんが声をかけてくる。

「今日も頑張っとるねえ、ユウタくん!」

「はい!今日は配り王になります!」

ユウタは胸を張って、ポストにチラシを入れる。

その姿を見ていると、なんだかこちらまで誇らしくなる。

チラシ配りは特別なスキルがいらない。
でも、意外と工賃が高い。
だから、利用者さんたちにとっては人気の作業だ。

タダシは横を歩きながら、ふと気づくことがあった。

算数が得意な子って、勉強を頑張った子じゃないんだよな。

この仕事をしていると、利用者さんの得意がよく見える。
ユウタは計算が速い。でも、勉強が好きだったわけじゃない。

「ユウタ、小さい頃って何して遊んでた?」

「え?レゴです!あと、駄菓子屋でお菓子買うのが好きでした!」

やっぱり、と思った。

レゴと駄菓子屋

ユウタはチラシを配りながら、楽しそうに話し始めた。

「レゴでね、家とか船とか作るんですよ。でも、ブロックが足りなくなるんです。
だから、どれを使うか考えて」

「へえ、工夫してたんだな」

「あと、駄菓子屋で100円もらって、どれ買うかめっちゃ悩んでました。
30円のやつと50円のやつ買ったら、あと20円で」

タダシは思わず笑ってしまった。

「それ、つるかめ算の基礎じゃん」

「つるかめ?」

「いや、なんでもないよ」

ユウタは首をかしげたが、すぐにまたチラシ配りに戻った。

タダシは歩きながら、自分の子ども時代を思い出していた。

ああ、俺もそうだった。

駄菓子屋で100円を握りしめて、
80円のお菓子を買ったらあと20円。
でも40円のも欲しい。
じゃあ80円のを60円のに変えよう。

あれは算数の勉強なんて意識していなかった。
ただ、夢中で遊んでいただけだ。

つるかめの感覚

「タダシさん、これ、あと何枚ですか?」

ユウタがチラシの束を見せてきた。

「えっと残り30枚くらいかな」

「じゃあ、あと15軒で半分ですね!」

タダシは思わず足を止めた。

「ユウタ、なんで15軒って分かったの?」

「え?だって1軒に2枚入れるから」

彼は当たり前のように言った。

タダシの胸の奥がじんわり温かくなった。

こういう感覚が、算数の土台なんだよな。

計算ドリルを何時間やっても身につかないものが、
遊びの中では自然に育つ。

でも、タダシはそれを教訓として語るつもりはない。
ただ、目の前のユウタの姿が静かに教えてくれるだけだ。

帰り道

チラシを配り終え、事業所へ戻る途中。
ユウタがぽつりと言った。

「タダシさん、ぼく、算数だけは得意なんですよ。
なんでか分からないけど」

「うん。分かるよ」

「え?」

「ユウタ、小さい頃、よく遊んでたでしょ。レゴとか、駄菓子屋とか」

「はい!」

「それがね、たぶん理由なんだよ」

ユウタはしばらく考え込んでから、ふわっと笑った。

「じゃあ、遊んでてよかったんだ!」

「うん。すごくね」

春の風が、ユウタの笑顔をやさしく揺らした。

タダシはその横顔を見ながら、
今日のチラシ配りも悪くないな、と思った。

おしまいに(発達支援)

タダシです。

まだまだ、修行が足りませんね。

トホホ、です……(泣

この物語は、こちらの就労継続支援B型事業所「ふるーる」をモデルにして作成しています。Googleマップ

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