発達支援27:トテチテタ⑤

発達支援27 発達支援
発達支援27
はじめに(発達支援)

今回は就労継続支援B型作業所トテチテタでのお話です。お楽しみに!

登場人物紹介

タダシです。就労継続支援B型トテチテタの職業指導員です。

広島市の外れにある就労継続支援B型事業所「トテチテタ」は、朝になるといつも少しだけ騒がしい。
玄関の引き戸がガラガラと開くたび、利用者さんたちの声が重なり、コーヒーの香りと混ざって、温かい空気が流れ込んでくる。

風の強い日

その日は朝から風が強かった。
トテチテタの玄関を開けると、春の風が勢いよく吹き込み、掲示板のチラシが一枚、ひらりと床に落ちた。

「今日は飛びますね」

マサトが折り紙の袋を抱えながらつぶやく。

「飛ぶのはドラゴンだけにしてほしいけどな」

タダシは笑った。

ユウタは風に揺れる髪を押さえながら言った。

「タダシさん、今日のチラシ配り、ぼくがリーダーやります!」

「お、頼もしいね」

「風に負けない方法、考えてきました!」

ユウタは胸を張る。
その横で、カズマが地図を広げた。

「今日は風避けルートを使います。建物が多いので、風が弱いです」

「さすがカズマ。じゃあ、三人で行こうか」

裏道

商店街の裏道は、建物が密集していて、確かに風が弱かった。

カズマは、地図を見ながら慎重に歩く。

「ここを右に行くと、風が強くなります。今日は左です」

「了解です、隊長!」

ユウタが敬礼する。

マサトは折り紙のドラゴンをポケットにしまい、風の様子をじっと観察していた。

「今日は、飛ばせません。風が荒れています」

そんな会話をしながら歩いていると、突然、ユウタが立ち止まった。

「タダシさん、大変です」

「どうした?」

「ポストがなくなってます!」

見ると、いつもチラシを入れている古いアパートのポストが、工事のために取り外されていた。

「ほんとだ。工事中だね」

ユウタはチラシを握りしめ、真剣な顔になった。

「どうしましょう配れません」

「今日はここ、スキップでいいよ」

「いや、でも」

ユウタはアパートの入り口を見つめ、何かを考えているようだった。

乗り越えた!

そのとき、アパートの奥から工事のお兄さんが出てきた。

「すみませーん、ここ工事中なんで」

ユウタがすかさず前に出た。

「あの!ぼくたち、チラシ配りに来たんです!
でも、ポストがなくて。どうしたらいいですか!」

お兄さんは驚いたように目を丸くした。

「え、ああチラシ?ああ、これか」

お兄さんは足元の段ボール箱を指さした。

「住民の人に渡す郵便物、全部ここに入れてるんだ。
もしよかったら、その箱に入れてくれたら、あとで渡しとくよ」

「いいんですか!」

「もちろん」

ユウタは、ぱっと笑顔になり、チラシを丁寧に箱へ入れた。

「ありがとうございます!ぼく、今日のリーダーなんです!」

「おお、頼もしいなあ」

お兄さんは笑いながらユウタの頭を軽くなでた。

その横で、カズマが地図にメモを書き込んでいた。

「ここは、工事中ルートとして、記録します」

マサトは、折り紙のドラゴンを取り出し、お兄さんにそっと差し出した。

「これお礼です」

「え、いいの?ありがとう!」

お兄さんは嬉しそうにドラゴンを受け取った。

リーダー

事業所へ戻る途中、ユウタが言った。

「タダシさん、ぼくちゃんとリーダーできましたか?」

「うん。すごくよかったよ。
あのお兄さんとのやり取り、完璧だった」

「ほんとですか!」

「うん。あれは交渉っていうんだよ」

「交渉!」

ユウタは胸を張った。

「ぼく、交渉できるんだ!」

「できるよ。今日、見せてもらったからね」

カズマが地図を見ながら、言った。

「ユウタさん、今日の交渉地図に記録しておきます」

「地図に!?」

「はい。ユウタ交渉ポイントとして」

マサトは折り紙の袋を抱えながら言った。

「ドラゴンも喜んでいます」

タダシは笑いながら三人を見た。

(この子たち、ほんとにいいチームだな)

春の風が、少しだけ優しくなった気がした。

おしまいに(発達支援)

タダシです。

まだまだ、修行が足りませんね。

トホホ、です……(泣

この物語は、こちらの就労継続支援B型事業所「ふるーる」をモデルにして作成しています。Googleマップ

発達支援
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました