第52話 電話がつながらず

悩んでもいい第52話 サンタ第2工房
悩んでもいい第52話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

広島駅前徒歩8分。サンタ第2工房の夕方は、木の香りと静かな作業音が心地よく響く。しかし、毎週金曜日だけは少し違う。タダシさんが、宮城県北の実家――栗原市のほうへ帰省する日なのだ。

🚗毎週土曜日のタダシロス

金曜の午後。タダシさんが帰る準備をしていると、ミクさんがさりげなく声をかける。

「タダシさん、今日もご実家ですか?」

「はい。母の様子を見に行ってきます。明後日の日曜日夕方には戻りますので」

「そう。気をつけてね」

その言い方が、ほんの少しだけ寂しそうなのを、タダシさんは気づいていた。

そして帰省した夜。
栗原市の実家で夕飯を食べ終えたころ、スマホが震える。

ミクさんからだ。

「タダシさん、今どこですか?」

「実家ですよ。今日はゆっくりしてます」

「そう。工房、静かすぎて。なんだか変な感じなのね」

そんな電話が毎週のようにかかってくる。
内容は他愛もない。

「今日の工房、田中さんがまた寸法間違えたのよ」
「新しい木材、香りがすごく良かったわ」
「栗原って、夜は星がきれい?」

まるで、工房の空気を共有したいかのように。

タダシさんは、少し照れながらも毎回丁寧に答えていた。

📵そして事件は起きた

ある金曜日。
タダシさんは実家に着くと、スマホをマナーモードにしたまま、設定を戻すのを忘れてしまった。

その夜。
ミクさんは、いつものように電話をかけた。

しかし――

呼び出し音が鳴らない。
留守番電話にもならない。
既読もつかない。

「え?」

ミクさんの胸がざわついた。

もう一度かける。
つながらない。

三度かける。
つながらない。

「タダシさん?」

不安がじわじわと怒りに変わっていく。

🔥翌朝、怒り爆発

翌朝。
タダシさんがスマホを見ると、通知が山ほど来ていた。

「ミクさんから?」

慌てて折り返すと、電話はすぐにつながった。

「タダシさん」

その声は、いつもの柔らかさとは違っていた。

「昨日、何度も電話しました。どうして出なかったんですか?」

「すみません。マナーモードのままで気づかなくて」

「気づかなくて、じゃないですよ。工房のこと、急ぎのこと、相談したいこといろいろあったんです」

ミクさんの声は震えていた。

「毎週、帰省するのはいいんです。でも、連絡が取れないのは困ります。仕事ですし、それに」

少し間があいた。

「心配するじゃないですか」

タダシさんは、胸がぎゅっとなった。

「本当に申し訳ありません。以後、必ず設定を確認します」

「お願いします。もう、あんな思いはしたくないので」

🌙その日の夜、少しだけ優しい声

その日の夜。
ミクさんから、短いメッセージが届いた。

「今日はちゃんとつながりましたね。よかったです」

タダシさんは、少し笑った。

「はい。もう二度と設定ミスはしません」

「ならいいです。では、明日もよろしくお願いします」

その言葉は、ほんの少しだけ柔らかかった。

🌲工房は今日も稼働中

翌日。
タダシさんが工房に戻ると、ミクさんはいつものように作業台に向かっていた。

「おはようございます、ミクさん」

「おはようございます。昨日はまあ、もういいです。さ、今日の作業を始めましょうか」

その声は、いつものミクさんだった。工房には、木の香りと、ちょっとした人間らしい温度が満ちていた。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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