第51話 大きな仕事

悩んでもいい第51話 サンタ第2工房
悩んでもいい第51話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

広島駅前徒歩8分。午後のサンタ第2工房では、タダシさんが仕上げ用の紙やすりを片付け、ミクさんは新作の木製パーツを検品していた。ふと、タダシさんが言った。

大きな仕事

「ミクさん、こうして毎日いろんな仕事がありますけど過去にはもっと、大変な案件もあったんじゃないですか?」

ミクさんは、手を止めて少し笑った。

「まあ、そうね。商売って、静かだと思ったら急に波が来るでしょう?そういうの、何度かあったわよ」

タダシさんは椅子を引き寄せた。

📅卓上カレンダー枠の大量注文

「昔ね、万年筆工房と大手文房具メーカーがコラボするって話があって。そこから、高級木材を使った卓上カレンダー枠の大量注文が来たことがあったの」

ミクさんは、当時の図面を思い出すように目を細めた。

「田中さんと吉田さんに伝えたら、田中さんが『へっ、板削るだけなら造作もねえ』って言ってね。
吉田さんはいつものようにニコニコしてたんだけど」

タダシさんはうなずいた。

「その規模だと、かなり大変ですよね」

🤒吉田さん、まさかのインフルエンザ

「作業を始めて数日後よ。吉田さんがインフルエンザで倒れちゃって」

ミクさんは、少し肩をすくめた。

「電話越しに、体が動かなくてって言われてね。ゆっくり休んでって、返したけど正直、電話を切ったあと手が震えたわ」

納期まで一ヶ月。吉田さんの穴は大きかった。

「田中さんに、一人でいける?って聞いたら、俺の手が四本あればなって言われたの」

タダシさんは苦笑した。

「田中さんらしいですね」

🚚外部の力を借りるしかなかった

「さすがにどうにもならなくて、配送業者の佐山さんにお願いしたの。忙しいのはわかってるけど、吉田さんが戻るまで助けて、って」

ミクさんは、当時の空気を思い出すように言った。

「佐山さん、配達の仕事があるのに夜遅くまで来てくれてね。それから万年筆工房にも頭を下げて、納期の微調整をお願いして回ったわ」

タダシさんは静かに聞いていた。

💼表では冷静、裏では心臓バクバク

「現場では、大丈夫ですよ、なんとかなりますって、言ってたけど、夜、一人で経理作業してるときは心臓がバクバクだったわ」

ミクさんは、少し照れたように笑った。

「ハーブティーと甘いチョコレートで無理やり落ち着かせてね。翌朝にはまた普通の顔して工房に立ってた」

📦そして、納品日

「納品日はね、田中さんの面取りが完璧で、佐山さんが迅速に仕上げてくれて。吉田さんも復帰して、フラフラしながら最後の一磨きを手伝ってくれたの」

ミクさんは、空っぽになった作業台を見つめるように言った。

「宅急便屋さんに持ち込んだとき、田中さんが『顔ひきつってるぞ』って言ってきてね。そりゃあ怖かったわよ。でも、みんなの腕は信じてたって、返したの」

タダシさんは、少し笑った。

「ミクさんらしいですね」

🌊商売はやめられない

「納品が終わった瞬間ね、胸の奥から何とも言えない気持ちがこみ上げてきて。自分のアイデアが形になって、みんなで危機を乗り越えて、それが誰かの机に届く。ああ、これだから商売はやめられないって思ったのよ」

タダシさんは、静かにうなずいた。

「なるほど。そういう経験があったから、今の工房があるんですね」

ミクさんは、少し照れたように笑った。

「まあ、そんな大波もあったって話よ。タダシさんにも、いつか大波が来るかもしれないから、覚悟しておいてね」

工房には、木の香りと、二人の穏やかな空気が静かに広がっていた。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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