「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでノートを広げ、「悪魔はウンコまみれに見える説」「働きアリの法則=2:6:2」「光と影と依存症の恐怖」と、強烈すぎる箇条書きを真剣な顔で書き連ねていた私に、妻のミクが温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。
「さっきから悪魔はウンコまみれに見えるらしいぞ!とか2割は反抗する運命なのだ!って、一人で何のオカルト講義を開いているの?」
「ふふふ、ミクよ。よくぞ聞いてくれた」
私はほうじ茶を一口すすり、闇の存在を察知した祈祷師かのような眼差しで語り始めた。
「神様がいるのになぜ悪魔も存在するのかという謎について思索していたのだよ!カトリックの神父様によれば、悪魔にとりつかれた人はウンコまみれに見えるそうだ!まさに完全な光の裏にできる影であり、働きアリの法則と同じく一定数存在する反抗分子なのだよ!タバコや酒やギャンブルなど、一度落ちたら抜け出せぬ闇の気配を感じたら、目を逸らして速やかに逃げるのが鉄則なのだ!」
私が熱っぽく「ウンコまみれの悪魔説」と「闇からの回避術」を語り尽くすと、ミクはほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。
「へぇ。抜け出せぬ闇の気配を感じたら、逃げるのが鉄則ねぇ」
「うむ!悪魔と目を合わせてはいかんのだよ!」
「じゃあ、お父さん。さっき、今月はお小遣いを節約するぞって、誓った舌の根も乾かぬうちに、リビングの隅でスマホをコソコソ弄って、夜中のタイムセールで限定版の電動ドライバーをポチろうとしていた闇の気配は何かしら?」
「えっ?」
ミクはニコニコしながら、私のスマホ画面を指さした。
「買いたい誘惑という名の闇にすっかり取り込まれて、買い物カゴに商品を投入していたじゃない。悪魔をウンコまみれって笑う前に、自分のお買い物依存という名の闇の気配から目を逸らして逃げたらどうなの?」
「ぐっ!な、なぜそれを!あれはDIYの効率を高め、家計に貢献するための聖なる投資であって!」
痛いところを突かれ、私は大汗をかいて言葉に詰まる。
「神父様がお祈りと断食で誘惑を退けたように、お父さんもお祈りとショッピングサイトのログアウトでその邪心を取り払いなさいな」
ミクの容赦ないツッコミに、私は完全に降参した。
「御意。ただちにカートを空にしてアプリを閉じ、物欲という名の悪魔の誘惑から全速力で逃げ出してまいります」
悪魔の正体と立ち向かう術に思いを馳せつつも、己の浅ましい物欲の気配をあっさり見抜かれて苦笑いする私。
ミクの愛あるツッコミに感謝しながら、私はノートを閉じ、我が家の平和とお財布の平穏を守るべく、静かにほうじ茶を飲み干すのだった。





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