「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでノートを広げ、「戦争と信仰の収穫」「焼き畑農業説」「悪魔チームvs神様チーム」「入会金無料のファンクラブ」と、人類史と独自の神学が交錯するメモを真剣な顔で書き連ねていた私に、ミクが温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。
「さっきから、戦争は神様の焼き畑農業なのか!とか、悪魔チームに対抗するファンクラブ勧誘!って、一人で何の壮大な世界平和サミットを開いているの?」
「ふふふ、妻よ。よくぞ聞いてくれた」
私はほうじ茶を一口すすり、世界情勢を憂う地球規模の哲学者かのような眼差しで語り始めた。
「なぜ、戦争や大災害はなくならないのか、その真意について思索していたのだよ!歴史を紐解けば、大きな苦難のあとにこそ、強い信仰が実る。権力やお金、武器で他人をコントロールしようとする悪魔チームに対抗するため、神様は命がけで神様チームのファンクラブへの入会を呼びかけているのではないか。信じるということは、それほど重く大変なことなのだよ!」
私が熱っぽく「苦難と信仰のダイナミクス」と「ファンクラブ理論」について語り尽くすと、妻はほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。
「へぇ。権力やおカネで他人をコントロールしようとする悪魔チームに対抗するねぇ」
「うむ!権力や力に頼らず、愛と誠実さで生きることこそが神様チームのモットーなのだよ!」
「じゃあ、お父さん。さっきから家の中のチャンネル権という圧倒的権力を振りかざして、テレビのリモコンを片時も手放さず自分好みのドキュメンタリー番組を独占しているのは誰かしら?」
「えっ?」
妻はニコニコしながら、私が手の中にしっかりと握りしめていたテレビのリモコンを指さした。
「世界平和や他人をコントロールしない生き方をノートに熱弁する前に、まずは我が家のリビングでリモコンの独占権を手放してみたらどうなの?力で家族をコントロールしようとする姿は、まさに悪魔チームのやり口じゃないかしら?」
「ぐっ!な、なぜそれを!あれは世界の歴史と世界情勢を学び、地球の未来に思いを馳せるための学習であって!」
痛いところを突かれ、私は大汗をかいて言葉に詰まる。
「言い訳しないの!ファンクラブの入会を勧めるなら、まずはリモコンを私に譲って、我が家の小さな平和を体現しなさいな」
妻の容赦ないツッコミに、私は完全に降参した。
「御意。ただちに己の独善的な権力行使を深く猛省し、速やかにリモコンの所有権を譲渡して、我が家の平和と調和を守ります」
世界の試練と信仰の深さに思いを馳せつつも、家庭内での小さな権力欲をあっさり暴露されて苦笑いする私。
妻の愛あるツッコミに感謝しながら、私はノートを閉じ、我が家の平和とチャンネルの自由を守るべく、静かにほうじ茶を飲み干すのだった。





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