神様が見えない08|修道院?

ステンドグラス 神様が見えない
ステンドグラス
はじめに(神様が見えない)

以前書いていたブログ「神様が見えない」からリメイクして転載いたしました。

登場人物紹介

ミクの夫です。こんばんは!

ミクです。あなた、今日は何をやらかすのかしら?

「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」

夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでパンフレットやノートを広げ、「老後はどの修道院が心地よいか」という真面目な顔で唸っていた私に、ミクが温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。

「さっきからトラピストのバタークッキーとか、サンパウロの出版社とか、三ツ星レストランを運営するシスターとか、メモがカオスなことになってるけど、一体何をしてるの?」

「ふふふ、妻よ。よくぞ聞いてくれた」

私はほうじ茶を一口すすり、深遠な眼差しで遠くを見つめた。

「我が老後の住処について、深遠な黙想をしていたのだよ!カトリックの修道院といえば、清貧と祈りの厳かなイメージだが、実は日本にも多種多様な修道会があってね。自給自足でガレットを作るトラピストや、メディアで発信する聖パウロ、教育に熱心なイエズス会に援助マリア。実に魅力的だと思わないかね?」

「へぇ。で、お父さんはどこの修道院に入り込もうとしているわけ?」

「うむ!路上で(聞き屋)をされていたマルコ神父様のようにミラノ外国宣教会で人々の声に耳を傾けるもよし、カロンデレトの聖ヨセフ修道女会のように人々に奉仕するシェフを目指すもよしだ!祈りと奉仕に捧げる老後実に素晴らしいじゃないか!」

熱っぽく語る私に、妻はほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。

「あのねぇ、お父さん。修道会に入るには、従順・清貧・貞潔の3つの誓願を立てるって、自分でもノートに書いてるじゃない」

「む?それが何か?」

「まず、清貧。スーパーの黄色い値引きシールや、タダで手に入る献血の検査結果に目がくらんで、コレステロール値を上げてるお父さんに清貧が守れるかしら?」

「ぐっ!それは過去の未熟さ!」

「次に、従順。先週も、DIYの棚組み立ては過去の経験が全てだ!って私の助言を無視してパーツの順番を間違え、全解体したわよね?」

「うぐっ!あれは試されたのだ!」

「そして何より、修道院は共同生活よ。朝は決まった時間に起きて、規律正しく掃除や作業をするの。今だって、後で一気にやるから!って放置された脱ぎっぱなしの靴下が、リビングの真ん中で鎮座しているじゃない」

痛烈な三連撃に、私は完全に言葉を失った。

「修道院で老後を過ごす夢を見る前に、まず我が家という小さな共同生活で(従順と清貧)を実践したらどうかしら?」

妻はクスッと笑うと、私の足元にコロコロ(粘着ローラー)を差し出した。

「さあ、偉大なシスターや神父様たちの奉仕の精神を見習って、まずはリビングのカーペットに落ちた木くずと髪の毛を回収する掃除の業に励んで頂戴」

「御意」

遠い修道院の豊かな老後に思いを馳せる前に、妻という「一番身近な導き手」に従い、足元の奉仕を果たすことこそが今の私に与えられた召命なのだ。

私は苦笑いしながらコロコロを手に取り、我が家の平和のために力強く一歩を踏み出すのだった。

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