「墓じまいをしたいんだよね」
夕食時、私(妻)がそう呟いた瞬間、夫は箸を落としかけた。
「えっ、墓じまい!?費用は?お墓がなくなって寂しくないのか?そもそも親戚への説明は?手続きは?」(はい、出ました、夫の質問ラッシュスイッチ。しかも今日はフルパワー)
私は深呼吸して、温かいお茶をすすりながらゆっくり言った。
「寂しいよ。お墓がなくなるのは私だって寂しい。でもね、お母さんをダイヤモンドにしたら、ずっと一緒にいられるんだよ」
夫は目を見開き、一瞬思考がフリーズしたように黙り込んだ。
「ダイ、ヤ、?お義母さんを、?」
「そう、遺骨ダイヤモンド。墓じまいって撤去費用やら離壇料やらで30万から300万円くらいかかるでしょ?でも遺骨ダイヤモンドなら、一番人気のオレンジ0.1カラットで40万円くらいから作れるの」
夫は頭の中で素早く電卓を弾いたらしく、目を丸くした。
「なるほど。新しいお墓を建て直すよりずっと安いな」
「でしょう?それにね、遠くのお墓まで行かなくてもいいし、毎日自宅で手を合わせられるの。普段使いできるデザインにすれば、いつでもお母さんと一緒にいられるでしょ?」
夫は腕を組み、静かにうなずいた。
「確かに。あの山奥の霊園まで車を走らせるのは毎回大変だったからな。でも、なんでオレンジなんだ?」
「自然なプロセスのまま作ると、余計なものを加えないで一番キレイに出る色なんだって。お母さんのあの温かい笑顔みたいじゃない?」
夫は少し表情を緩め、懐かしそうに笑った。
「確かに、お義母さんは陽だまりみたいな温かい人だったな。妻がそうやって新しい形でつながれると思えるなら、俺も賛成したい」
夫の優しい言葉に、私の胸はじんわりと温かくなった。の、はずだったのだが。
「よし!じゃあ決まりね!お母さんを胸元に飾って、いつでも一緒にお出かけするわ!」
私が張り切って微笑むと、夫はふと我に返った顔で、自分の胸ポケットを両手でガードした。
「なぁ、妻よ、念のための確認なんだが」
「なに?」
「俺が将来逝った時も、やっぱりダイヤにするつもりか?」
「ええ、もちろん!あなたのは指輪にして、毎日肌身離さず身につけてあげるわよ!」
「いや待て!俺は落ち着きがないから、指輪にされたら妻が家事してる最中にシンクの水の中に滑り落ちて流されそうだ!俺の時は普通のお墓にしてくれ!」
「大丈夫よ、落とさないようにキツめのサイズでギッチギチに作っておくから!」
「余計に怖いよ!永遠に指に拘束されるじゃないか!」
自分の「将来の輝き方」に大慌てでツッコミを入れる夫の姿に、私は思わず吹き出してしまった。お母さんもきっと、天国でこの賑やかなやり取りを微笑ましく見守ってくれているに違いない。





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