「お母さんの遺骨をダイヤモンドにしたいんだ」
夕食後、私(妻)がそう切り出すと、夫は、またしても眉をひそめた。
「アクセサリーなんて、お前の仕事柄、職場に着けていけないだろ?規則もあるし」(はい、出ました、夫の現実的スイッチ。しかも今日はちょっと強め)
私は深呼吸して、温かいお茶を一口飲んでからゆっくり言った。
「だからこそ、ダイヤモンドにしたいのよ」
夫はぽかんとした顔で首を傾げた。
「どういうことだ?」
「ねぇ、あなたも思ったことない?もう若くないし派手なのは似合わないかも、とか、職場で浮きたくないから、って、最近アクセサリーを着ける習慣自体、なくなってたでしょ?」
「まあ、確かに最近のお前、腕時計くらいしか着けてないな」
「そう。でもね、これは母の形見なんですって、堂々と言えるアクセサリーなら、職場でも気にせず着けられるのよ」
夫は腕を組み、う~ん、と唸った。
「なるほど。形見と言われたら、誰も、派手だ、なんて野暮なツッコミは入れられないな」
「でしょう?遺骨ダイヤモンドはただのおしゃれアイテムじゃないの。お母さんとの永遠の絆であり、心の支えで、一緒にいる安心感なの。だから年齢も職場の雰囲気も関係ないのよ」
夫は、感心したように深くうなずいた。
「もし職場がアクセサリー厳禁だとしてもね」と、妻はニヤリと笑った。「ネックレスにして服の下に隠せばいいの。チェーンを短くすれば外からは絶対に見えないし、シンプルなデザインなら問題なし。結婚指輪と同じ、特別枠みたいなものよ!」
夫は呆れ半分、感心半分といった様子で苦笑した。
「お前、絶対に工夫して毎日こっそり着けて行く気満々だな?」
「もちろん!アクセサリーを着けたいんじゃないの。お母さんそのものを身近に感じたいんだから」
私の言葉に、夫はしばらく黙っていたが、やがて、優しく目を細めてうなずいた。
「そういうことなら、俺も分かる気がするよ。お義母さんに見守られてると思えば、仕事も頑張れるしな」
夫の温かい理解に、私の胸はじんわりと熱くなった、はずだったのだが。
「よし!じゃあ、決まりね!お母さんを胸元に忍ばせて、毎日一緒に通勤するわ!」
私が満足して胸を張ると、夫は何かを思い出したように、首元をさすり始めた。
「なぁ、妻。さっきの服の下に隠すってアイデアだが」
「なに?」
「俺が将来ダイヤになった時も、やっぱり、お前、服の下に隠して職場に持っていくのか?」
「ええ、もちろん!お腹のあたりにペンダントが来るように、長めのチェーンにして、服の中に大事に隠しておくわ!」
「なんでお腹なんだよ!胃もたれした時に、なんだか夫が重いとか言われそうだし、そもそも服の下でカサカサ動いて、気になって仕事集中できないだろ!」
「大丈夫よ!落ちないように下着の内側に安全ピンでガッチリ留めておくから!」
「扱いが雑!隠し方が密輸のやり方なんだよ!」
自分の将来の隠され方に、全力でツッコミを入れる夫の姿に、私は思わず大爆笑してしまった。お母さんもきっと天国で、服の下でドタバタする自分たちを笑いながら見守ってくれているに違いない。





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