「で、昨日の夜も遅かったわけね」
夜10時半。パジャマ姿の妻が、ダイニングテーブルで遅すぎる夕飯を頬張る私を、腕組みしながら見下ろしていた。目の前には、この時間帯には明らかに過剰なボリュームの焼きそばと、大盛りの白飯。
「いやぁ、マイコンのプログラミングが佳境でさ。試行錯誤してたらあっという間にスーパーが閉まる時間になっちゃって」
「だからって、夜中に炭水化物on炭水化物をドカ食いしていい理由にはならないでしょ。イライラをご飯で沈めようとするの、やめなさいよ」
ギクッとした。完全に見抜かれている。
ここ最近の私は、昼間は職場のパソコンに向かい、夜は事務所に居残って電子工作とプログラミングに没頭する毎日だった。試行錯誤の連続で、頭の中は常に「コードが通らない! なぜだ!」とパニック状態。
そのしわ寄せは、テキメンに日常へ現れる。
昼間、ふと職場の窓ガラスに映った自分の顔を見て愕然とした。笑顔が消えている。眉間に深いシワを寄せ、まるで「世界中のバグを一人で背負った男」みたいな深刻な顔をしていたのだ。
そんな状態で書き散らすブログなんて、パンチが効いているわけがない。
先日、職場のホームページに「手話カフェ参加者募集!」という明確な目的を持って書いたブログは、我ながら熱量と読み応えがあった。それに比べて、個人ブログはただの疲弊したおじさんの愚痴である。
「目的を持って生きないとダメだな。ブログも、毎日の生活も」
溜め息をつきながら焼きそばを口へ運ぶと、妻が呆れたように笑った。
「目的なら、今目の前にあるじゃない」
「え?」
「夜10時過ぎにドカ食いするのをやめて、笑顔で健康に生きるっていう立派な目的が」
ぐうの音も出ない正論である。
疲れが溜まると、人はつい笑顔を忘れ、イライラを食欲や愚痴で誤魔化そうとしてしまう。けれど、静かな湖畔のような穏やかな心を取り戻すには、まず自分が「笑顔を忘れている」と気づくことから始まるのかもしれない。
「よし、明日はプログラミングもほどほどにして、ちゃんと早く帰ってくるよ」
「はいはい。じゃあまず、そのお皿を洗うところから笑顔でやってみましょうか」
妻に言われ、私は引きつった笑顔で「御意!」と返事をした。
皆さんは、疲れやイライラが溜まった時、どうやって笑顔を取り戻していますか? 我が家ではとりあえず、妻の正論を聞くのが一番の特効薬のようです。





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