サンタ第2工房の朝。
木の香りがふわっと漂い、
ミクさんは作業台で積み木を磨いていた。
タダシさんは、昨日納品した小箱の確認に来ていた。
「ミクさん、おはようございます」
「おはよう、タダシさん。
ちょうどよかったわ。今日はね、接客の話をしたいの」
タダシさんは少し驚いた。
「接客ですか?」
「そう。タダシさん、営業マンだったでしょう?
安心感を渡すのが上手だったはずよね」
タダシさんは照れながらうなずいた。
ミクさん、突然接客講座を始める
ミクさんは、積み木を並べながら言った。
「安心感ってね、商品より先に渡すものなの。
お客様は、商品より人を見てるから」
タダシさんは、営業時代の課長の言葉を思い出した。
(あ。課長も同じこと言ってたな
顔を売るとは信頼を得ること)

ミクさんは続けた。
「まずね、タダシさん。
お客様が来たら、急に説明しないこと」
「えっ、そうなんですか?」
「そうよ。
いきなり説明されると、
売り込まれてるって感じがして不安になるの」
ミクさんは、積み木を一つ手に取った。
「まずはね、
『見てくださってありがとうございます』
って気持ちを伝えるの」
タダシさんは、深くうなずいた。
ミクさん、実演する
ミクさんは、工房の入口に立ち、
架空のお客様に向かって話し始めた。
「こんにちは。寒い中ありがとうございます。
ゆっくり見てくださいね。
もし気になるものがあったら、いつでも声をかけてください」
その声は、
落ち着いていて、
静かで、
どこかあたたかかった。
タダシさんは思わず言った。
「ミクさん、すごいですね。
なんか、安心します」
ミクさんは少し照れたように笑った。
「でしょ?
安心感ってね、声のトーンと、
急かさない姿勢で決まるの」
タダシさん、実演してみる
「じゃあ、タダシさんもやってみて」
「えっ、私が?」
「もちろん。
安心感を渡すのは、タダシさんの得意分野でしょう?」
タダシさんは、入口に立ち、
深呼吸をして言った。
「こ、こんにちは
あのゆっくり見てください
もし気になるものがあったら
あの声を」
ミクさんは笑いながら言った。
「タダシさん、緊張しすぎよ。
お客様は敵じゃないんだから」
「す、すみません」
「もう一回。
もっと、タダシさんらしくていいの」
タダシさんは、もう一度深呼吸した。
「こんにちは。
寒い中ありがとうございます。
ゆっくり見てくださいね。
もし気になるものがあれば、いつでもどうぞ」
ミクさんは、ふわっと笑った。
「うん。
それがタダシさんの安心感よ」
ミクさん、最後に大事なことを伝える
「タダシさん。
安心感を渡す接客ってね、
決定権はお客様にあるって態度なの」
タダシさんは、胸の奥がじんわり熱くなった。
(決定権。
それ、僕が営業時代に学んだことだ)
ミクさんは続けた。
「押しつけない。
急かさない。
選ばせる。
それが安心感なの」
タダシさんは、深くうなずいた。
「ミクさん
私、もっと上手になりたいです」
「大丈夫。
タダシさんならできるわ。
だって、あなたはもう安心感マンなんだから」
タダシさんは照れながら笑った。
この日、タダシさんは気づく
営業マンとして培った安心感は、
サンタ第2工房でもそのまま使えること。
そして、
ミクさんの言葉が、
自分の中の決定権は私を
さらに強くしてくれること。
物語は、まだまだ続く。





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