医局で頼まれごとをされ、
「役に立つマン」へ昇格したタダシさん。
(よし。今日は、ありがとうマンになるぞ!
昨日は、頭をぶつけたけど
今日はぶつけずに、役に立つんだ!)
そんな決意を胸に、
タダシさんは医局へ向かった。
医局の前で慎重になる男(4日連続)
深呼吸。
深呼吸。
深呼吸。
(今日は絶対に、転ばない
絶対に、頭をぶつけない
絶対に、コードを踏まない
俺は今日、完璧な営業マンになる!)
慎重にドアを開けた。
「失礼します。本日も伺いました!」
医局の空気は、もはや身内扱いだった。
「あ、タダシくんだ」
「今日も来たのか」
「昨日は頭ぶつけてたよね」
「今日はぶつけないでね」
(ぶつけキャラ?
俺、医局でキャラが増えてる!?)
頼まれごと、今日も発生
あの日最初に、名前を呼んでくれた医師が、
カルテを閉じてこちらを見た。
「タダシくん、ちょうどいい」
(きた!
営業マンのご褒美ワード!)
「この機器、なんか音が変なんだよ。
ちょっと見てもらえる?」
「はい!見ます!」
タダシさんは、慎重に機器の裏側を覗き込んだ。
(昨日は、頭をぶつけた
今日は、絶対にぶつけない)
慎重に、慎重に
ゴンッ。
「え?」
医局がざわついた。
「今の音、タダシくん?」
「またぶつけた?」
「昨日より軽い音だったな」
タダシさんは涙目になりながら言った。
「だ、大丈夫です!」
医局に笑いが起こった。
しかし、ここからが本番だった
音の原因は、
機器の内部設定が外科モードになっていたことだった。
(外科モード?
そんなモードあるの?)
設定を戻すと
音が正常に戻った。
「おお、直った!」
「タダシくん、ありがとう!」
「助かったよ!」
医局の空気が一気に明るくなった。
(え?
ありがとう?
俺、今ありがとうって言われた!?)
胸の奥がじんわり熱くなった。
さらに感謝が続く
別の医師が、声をかけてきた。
「タダシくん、昨日の資料、外来の先生が褒めてたよ」
「説明がわかりやすいってさ」
「ありがとうね」
(また、ありがとう!?
俺、今日ありがとうマンになってる!?)
さらに別の医師が言った。
「タダシくん、今日の午後の説明会、
君が来てくれると助かるんだよ。
ありがとうね」
(え?
まだ何もしてないのにありがとう!?
これが営業マンの信頼!?)
タダシさんは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
医局を出た瞬間、タダシさんは悟る
廊下に出たタダシさんは、
資料を抱えながら深く息をついた。
(ありがとうって
こんなに嬉しい言葉だったんだ)
サトウ課長の言葉がよみがえる。
- 安心感を売る
- 顔を売る=信頼を得る
- 儲ける=信者をつくる
(今日の、ありがとう
もしかして、信者の第一歩なのかもしれない)
タダシさんは、
営業マンとしての成長をまたひとつ実感した。
この日、タダシさんはまだ知らない
今日の、ありがとうが、
医局との距離をさらに縮める大きな一歩だったことを。
そして、
後にミクさんと出会い、
「決定権は私」という価値観へつながっていく
伏線になっていることを。
物語は、まだまだ続く。


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