第60話 美容院帰りを気づかないタダシさんを諭す

悩んでもいい第60話 サンタ第2工房
悩んでもいい第60話
はじめに(サンタ第2工房)

この物語は、私が大好きな木のおもちゃ屋さんをモチーフにして作成しました。主人公のミクさんは、妹の孫の名前からつけています。お気に入りに追加していただけたらうれしいです。

登場人物紹介

職人見習のタダシです。

サンタ第2工房のミクです。

広島駅前徒歩8分。
サンタ第2工房の朝は、木の香りと、作業台の上の端材の山から始まる。

その日の午前。
ミクさんが、作業中のタダシさんに声をかけた。

「タダシさん、来週のどこかで美容院に行くから、
その時間は工房にいないかもしれないわね」

タダシさんは、工具を持ったまま顔を上げた。

「わかりました。予定だけ教えていただければ大丈夫です」

言いかけた言葉――
「ミクさん十分綺麗ですよ」
は、飲み込んだ。

(言ったら怒られる気がする)

ミクさんは、少しうきうきした声で続けた。

「美容院って、行く前から嬉しいのよね。
楽しみだわ」

タダシさんは、その様子を見て
(ミクさん、こういうとき本当に楽しそうだな)
と思った。

✂️そして美容院当日(月曜日)

月曜日の午後。
工房はいつも通り作業音が響いていた。

タダシさんは、端材の整理をしながら
(ミクさん、今日は午後いなかったな)
と思ったが、特に深く考えなかった。

夕方。
ミクさんが戻ってきた。

「お疲れさま、タダシさん」

「お疲れさまです」

タダシさんは、いつも通りの挨拶を返した。

本当に、いつも通りだった。

ミクさんの髪型が、

  • トップが少し軽くなって
  • 前髪の流れが変わって
  • 全体の雰囲気が柔らかくなっていたのに――

タダシさんは、まったく気づいていなかった。

(なんか、髪の感じが違うような?
いや、気のせいか?長さは変わってないし)

そんな程度だった。

🌙帰り際、ミクさんが打ち明ける

作業が終わり、帰る準備をしていたとき。

ミクさんが、ふと声をかけた。

「タダシさん、今日ね。美容院へ行ってきたの」

「えっ?」

「だから、午後3時から5時までいなかったのよ。
その間、もし用があっても対応できなかったから、ごめんなさいね」

タダシさんは、慌ててミクさんの髪を見た。

「あーー!なんか感じが変わったような?
いや、道理できれいだなと思ったんです。
はい、すごくきれいです。ほんとにきれいです。
あ、いや、前からきれいでしたけど、今日はさらに」

連発した。

ミクさんは、じっとタダシさんを見た。

そして――

🔨ピシャリとひとこと

「タダシさん。
こういうことはね、気がついたらすぐに言わなきゃ」

タダシさんは、肩をすくめた。

「はい。すみません」

「女性はね、髪を整えた日は気づいてほしい日なのよ。
長さが変わらなくても、雰囲気が変わることだってあるの」

「はい。次から気をつけます」

ミクさんは、少しだけ優しく笑った。

「まあ、いいわ。
あなた、悪気がないのはわかってるから」

タダシさんは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

(次は絶対に気づこう)

工房には、木の香りと、
ミクさんの指導を受けて少し成長したタダシさんの気配が
静かに漂っていた。

おしまいに(サンタ第2工房)

タダシです。読んでいただいて、ありがとうございます!

ミクです。今日も一日お疲れ様でした。

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