「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでノートを広げ、「遺骨ダイヤモンドの真実」「HPHT法と1週間」「クリスチャンとお墓問題」「A8ネットとセルフバック」と、振り幅の大きすぎる箇条書きを真剣な顔で書き連ねていた私に、妻が温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。
「さっきから、遺骨から炭素を取り出してダイヤモンドを!とか、セルフバックでお得に体験!って、一人で何の新事業プレゼンを開いているの?」
「ふふふ、ミクよ。よくぞ聞いてくれた」
私はほうじ茶を一口すすり、先端技術とビジネスに精通した専門家かのような眼差しで語り始めた。
「遺骨ダイヤモンドの深い技術と、心の慰めについての思索なのだよ!1万年以上かかる天然のプロセスを高度な技術で再現し、遺骨の炭素から本物のダイヤモンドを作る。クリスチャンとして最初こそ悩んだが、ご遺族の悲しみに寄り添い、親身にサポートすることこそが大切なのだ!この経験が後のブログマーケティングやアフィリエイトにも活きたのだよ!」
私が熱っぽく「遺骨ダイヤモンドの科学」と「真心を込めた顧客サポートの価値」を語り尽くすと、ミクはほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。
「へぇ。ご遺族の悲しみに寄り添い、真心を込めてサポートしたねぇ」
「うむ!相手の不安にどれだけ迅速に応えられるかが信頼のすべてなのだよ!」
「じゃあ、お父さん。一昨日から私がリビングの電球が切れて暗くて困っているのって相談しているのに、光の原理について調べているからって後回しにして放置しているのは誰かしら?」
「えっ?」
ミクはニコニコしながら、天井の切れた電球を指さした。
「お客様の夜中の長電話には親身に付き合っておきながら、目の前の妻からの切実な電球交換リクエストを放置してどうするのよ?遺骨ダイヤモンドの輝きを語る前に、我が家のリビングを明るく照らして頂戴?」
「ぐっ!な、なぜそれを!あれは暗闇の中で光のありがたさを再認識するという、一種の試練であって!」
痛いところを突かれ、私は大汗をかいて言葉に詰まる。
「言い訳しないの!人の役に立つ喜びを知っているなら、今すぐ脚立を持ってきて電球を替えなさいな」
ミクの容赦ないツッコミに、私は完全に降参した。
「御意。ただちに己の怠惰を悔い改め、我が家を明るく照らすべく、迅速かつ誠実に電球交換の任務を果たしてまいります」
遺骨ダイヤモンドの技術と仕事のやりがいに思いを馳せつつも、家庭内でのサポート不足をあっさり暴かれて苦笑いする私。
ミクの愛あるツッコミに感謝しながら、私はノートを閉じ、我が家の平和と明るいリビングを守るべく、静かにほうじ茶を飲み干すのだった。





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