「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでノートを広げ、「悪魔の特徴=目つきが悪い・ネガティブ・吹き出物」「歩きタバコと噂話の危険性」「生活習慣の乱れが悪魔化の第一歩」と、異様な箇条書きを真剣な顔で書き連ねていた私に、ミクが温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。
「さっきから、顔に吹き出物が出たら悪魔の予兆なのだ!とか悪魔の正体は乱れた生活習慣だ!って、一人で何の生活指導講義を開いているの?」
「ふふふ、妻よ。よくぞ聞いてくれた」
私は、ほうじ茶を一口すすり、風紀委員長かのような眼差しで語り始めた。
「悪魔の正体と見分け方について思索していたのだよ!悪魔とは怪物ではなく、疲れやイライラから目つきが悪くなり、ネガティブな暴言や悪習に染まった姿勢の崩れた自分自身なのだ!吹き出物が出たり姿態が崩れたら悪魔化の予兆!だからこそ規則正しい生活とお祈り、そして余裕ある心で悪魔を退けることが大切なのだよ!」
私が熱っぽく「悪魔化の予兆」と「生活習慣改善の重要性」を語り尽くすと、妻はほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。
「へぇ。イライラして姿勢が崩れ、吹き出物が出たら悪魔の予兆ねぇ」
「うむ!悪習を断ち切り、良い習慣を継続することこそが防壁なのだよ!」
「じゃあ、お父さん。さっきから背中を丸めてジャージの裾を引きずりながら、顎の下にできた吹き出物を気にしつつ(あー、今日も疲れた、もう何もしたくない)ってネガティブなため息を連発している人は誰かしら?」
「えっ?」
妻はニコニコしながら、私の顔と崩れた姿勢を指さした。
「悪魔にならないための規則正しい生活をノートに書く前に、その猫背を伸ばして、さっさと着替えてお風呂に入ったらどうなの?今のお父さん、どこからどう見てもイライラして悪魔になりかかっているわよ?」
「ぐっ!な、なぜそれを!あれは疲労という荒野で己の弱さと戦う聖なる葛藤であって!」
痛いところを突かれ、私は大汗をかいて言葉に詰まる。
「言い訳していないで、姿勢を正して、温かいお湯に浸かってきなさい。規則正しい生活は、まず今夜早く寝ることからよ」
妻の容赦ないツッコミに、私は完全に降参した。
「御意。ただちに背筋を伸ばして入浴し、悪魔の予兆を綺麗に洗い流して早寝早起きを実践してまいります」
悪魔の正体と整えるべき生活習慣に思いを馳せつつも、己の疲れ切った猫背と溜息をあっさり悪魔扱いされて、苦笑いする私。
妻の愛あるツッコミに感謝しながら、私はノートを閉じ、我が家の平和と健康的な夜を守るべく、静かにほうじ茶を飲み干すのだった。





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