神様が見えない21|リッチ・デヴォス?

お金持ちとラザロ 神様が見えない
お金持ちとラザロ
はじめに(神様が見えない)

以前書いていたブログ「神様が見えない」からリメイクして転載いたしました。

登場人物紹介

ミクの夫です。こんばんは!

ミクです。あなた、今日は何をやらかすのかしら?

「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」

夜の10時過ぎ。リビングのテーブルでノートを広げ、「リッチ・デヴォス氏と富の責任」「医療機器営業の極意」「自分を売れ!」「富を拝んではいけない」と、熱のこもったメモをぎっしり書き連ねていた私に、ミクが温かいほうじ茶を差し出しながら声をかけてきた。

「さっきから富と神の両方に仕えるには!とか営業の極意は自分を売ることだ!って、一人で何のビジネスセミナーを開いているの?」

「ふふふ、妻よ。よくぞ聞いてくれた」

私はほうじ茶を一口すすり、実業家兼、伝道者のような眼差しで語り始めた。

「お金持ちになることと聖書の教えの調和について思索していたのだよ!大富豪のリッチ・デヴォス氏のように、与えられた富や仕事を神様からの預かりものとして他者と分かち合い、責任を持って使うことこそが大切なのだ!一昨日も家族から仕事の相談を受けてね、商品を売る前に自分を売れという営業の真髄を伝授しようと考えていたところなのだよ!」

私が熱っぽく「富の使い方と営業の極意」を語り尽くすと、妻はほうじ茶をすすりながら、じとーっとした目を向けた。

「へぇ。商品を売る前に自分を売るねぇ」

「うむ!役職や傲慢さに縛られず、自分という人間性を磨いて他者に奉仕することが仕事の真理なのだよ!」

「じゃあ、お父さん。昨日、家計の足しにしようと思ってお父さんがフリマアプリに出品した、あの手作りの木製コースター、真心が詰まった逸品だ!って強気の高値をつけて、閲覧数ゼロのまま誰にも買われていないのはどうしてかしら?」

「ぐっ!な、なぜそれを!」

痛いところを突かれ、私は大汗をかいて言葉に詰まる。

「自分を売るのは素敵だけど、買い手のニーズを無視して自分のこだわりだけを押し売りするのは、ただの自惚れじゃないかしら?聖書の慎ましさはどこへ行ったのよ」

「うぐぐっ!あれは私の技術というタレントを分かち合うための投資であって!」

「言い訳しないの!高尚なビジネス論をノートに書く前に、まずは出品したコースターの価格を適正にして、謙虚な商売の勉強をし直しなさいな」

妻の容赦ないツッコミに、私は完全に降参した。

「御意。ただちに欲目を捨てて適正価格に修正し、一から謙虚に商売と奉仕の精神を学んでまいります」

富の使い方と仕事の深遠な意味に思いを馳せつつも、己のフリマアプリでの商魂と自惚れをあっさり見抜かれて苦笑いする私。
妻の愛あるツッコミに感謝しながら、私はノートを閉じ、我が家の平和と適正な家計運用を守るべく、静かにほうじ茶を飲み干すのだった。

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